2021 Fiscal Year Research-status Report
A comparative law study on the Judicial Yuan Interpretations in Taiwan
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19K01257
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
徐 行 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (30580005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸谷 義治 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (10643281)
児玉 弘 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (30758058)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 比較法 / 台湾法 / 司法院大法官解釈 / 憲法法廷 / 憲法訴訟 / 憲法解釈 / 司法解釈 / 判例 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は台湾司法院大法官会議が行使している憲法の解釈および法律・法令の統一解釈権の運用実態を解明し、日本・中国との比較を通じて、法秩序の形成ないし台湾政治の民主化に伴う法の支配と人権保障の確立・深化におけるその役割を明らかにすることである。 2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、台湾への渡航が実現せず、フィールドワークに基づく実態調査を実施できなかったが、2019年に憲法訴訟法が制定され、2022年1月4日に施行されたため、従来の大法官会議が憲法法廷(憲法裁判所)に改組され、対審的構造の導入によって、従来と少し異なる活動状況を公開資料に基づく分析で確認できた。 まだ制度運用の期間は短いものの、3月31日までに3件の判決(従来の大法官解釈)、2件の実体裁定(うち1件は差止)と130件の手続裁定(不受理の決定)を下しており、従来より少し早いペースで憲法訴訟の申請(従来の大法官解釈申請)を処理していることが窺える。特に受理するかどうかの判断は大法官会議全体による審査から3名の大法官によって構成される計5つの審査庭によって分担されるようになったことが、手続審査の効率化に大きく寄与していると推測される。 また、3件の判決の内訳は違憲判決1件、大法官解釈の変更1件(実質的な違憲判断)と法律解釈統一事件1件となっていて、いずれも既存のルールに対する修正が行われている。憲法法廷は従来通り積極的に違憲判断を下し、しかも大法官会議よりも積極的に司法による法形成を進めようとしている兆候が見られる。今後憲法法廷による判決の件数が増えるのにつれて、その傾向が一層明確になると思われるが、より長期的な観察と分析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスによる感染拡大の影響を受けて、台湾現地での資料収集とヒアリング調査が不可能となり、分担者や台湾側の共同研究者とオンラインで連絡を取って、今後の計画について検討し、人的ネットワークを構築・維持することはできているものの、それを研究計画の遂行に活かしきれない状況がなおも続いている。 また、オンラインでの情報交換は特に憲法法廷に関わる制度改革の実施状況の確認に一定の役割を果たしたが、当事者(特に現職大法官や大法官経験者)に対する聞き取り調査に代替できるものではなく、後者はやはり対面式の方が望ましいため、実施できない状況に変わりがない。 先行研究の分析を含む文献研究は比較的に順調に進んでいるが、各種の書籍や電子化されていない論文等の文献の入手も新型コロナウイルスの影響を受けたため、今年度はオンラインで入手できる情報の整理と台湾側の共同研究者による資料の複写・提供に時間を費やした。研究期間の延長に伴い、本来計画の中心的対象ではない憲法法廷に関する研究も追加で行う必要が出てきたため、文献研究の取りまとめに関しても当初の見込みよりも長い時間を必要とする。 以上の事情により、本来の計画から遅れていて、まだ当初想定していたほどの研究成果は得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
台湾における新型コロナウイルス感染症に関する規制が緩和されており、入国に伴う隔離期間が短くなったため、台湾現地での文献資料の収集とヒアリング調査が現実的になってきた。特に後者について、台湾側の研究者の協力を得て2022年度前半に台湾を訪問し、大法官解釈の申請者側と大法官側の両方に対する個別的な聞き取り調査を行い、研究集会の形で今までの研究で得られた知見について情報の共有と意見交換を行う予定である。 大法官会議による大法官解釈に関する先行研究を踏まえて、現行の憲法法廷の制度設計やその運用状況との比較を中心に、台湾における憲法解釈の現在地について年度内に論文にまとめて公表する。 新型コロナウイルスをめぐる情勢はまだ流動的であり、研究計画も臨機応変に調整する必要があると認識している。現地調査も感染症対策による制約を受けざるを得ないため、ヒアリング調査が順調に進められなかった場合は、各種文献資料を中心に暫定的な分析結果を研究会報告や論文の形で提示する。 また、台湾国内でも新制度の運用状況が注目されているため、関連する研究が活発化することが予想される。代表的な研究論文等を選別して日本語に翻訳し、台湾側の認識や分析を生の声として紹介する予定である。これにより、制度に対するより全面的な理解が可能になると思われる。
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Causes of Carryover |
2021年度の研究費に関しては1,499,780円の残額が生じた(前年度未使用額1,211,017円を含む)。これは新型コロナウイルス感染症の影響により、台湾現地での文献資料収集やヒアリング調査ができなくなり、分担者や共同研究者との意見交換会が開催中止となったため、2年連続で代表者と分担者の旅費が余ったことによる。 2021年度の残額は研究期間の延長により、2022年度の台湾における現地調査のための旅費、資料代として使用する予定である。
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Research Products
(12 results)