2019 Fiscal Year Research-status Report
The Judges of the Constitutional Court of Russian Federation - Constitutional court in non-democratic regime
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19K01261
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
樹神 成 三重大学, 人文学部, 教授 (20186703)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 憲法裁判所 / 大統領中心主義 / 超大統領制 / 権力分立 / 隠された権限 / 国家元首 |
Outline of Annual Research Achievements |
「1993年ロシア連邦憲法における大統領制‐超大統領制論と大統領裁量義務論」『法経論叢』37巻1号(2019年10月)は、現代立憲民主主義の基準を満たしているといわれる1993年憲法のもとで、なぜ非民主主義レジームが成立するかを、「非民主主義レジームにおける憲法裁判所」を考える出発点とし、1993年憲法の条文が超大統領制といわれる連邦大統領の地位と権限を導く憲法解釈を導くことを指摘した。憲法条文と憲法解釈との関係はさらに詰める必要がある。 モスクワでの憲法裁判所裁判官についての資料調査を、9月に実施した。モスクワの図書館で主に各裁判官の執筆した文献を複写した。ただし、憲法裁判官論をどのように立論するか、まだ十分な見通しが立っていない。なぜなら、憲法裁判所の裁判官判決のロシア憲法学における位置が明確にできていないからである。 Bernd Wieser(Hrsg), Handbuch der russischen Verfasung,Verlag Österreich GmbH, Wien.は、ドイツのロシア法研究者が、ロシア憲法学批判を展開している憲法評釈であり、憲法裁判所判決および専門書を網羅的体系的に分析している。まだ、公表には至っていないが、この評釈は、ドイツ法学との比較で憲法裁判所裁判官の判決のロシアにおける位置と内容を明らかにする視点を提供できると考えている。 プーチンロシア大統領は2020年1月に憲法改正を提案し、その条文は、改正前の条文と比較して、自由主義と民主主義からすると問題があるが、ロシア憲法裁判所は、憲法改正条文を合憲と判断した。この憲法改正は、内容の点でも過程の点でも、本研究に密接に関係しており、この内容と過程の一部について原稿を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究を通して、憲法条文と憲法解釈との関係、それらと憲法現実との関係が重要であるという視点を獲得することができ、また、93年憲法のドイツ専門家による批判的評釈から憲法裁判所判決が批判的な評釈の対象にならロシアの問題点という視角が、問題の検討の手がかりを与えるのでないかという発想を得ることができた。ロシアだけでなく、カザフスタンでも憲法裁判所による憲法評釈があるが、だからといって、憲法学や世論において憲法裁判所判決が広く検討されているわけではない。それとの関係で、憲法裁判所の活動が活発なことは、ある種、憲法裁判所が政治機能を果たしていること、また憲法裁判所裁判官に秩序維持等の点で政治家と同じ発想があるのではないかと仮説も立てることができた。ただし、憲法裁判所判決の分析、憲法裁判官の書籍の収集、ドイツ語の憲法評釈の解読のテンポを速める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツのロシア憲法学批判について、現地調査も含め、明らかにし、ドイツのロシア応報研究者との交流を進める必要がある。そのために、2020年度後期または末に現地調査を行う。また、重要な条文について、翻訳を行う。ロシア語版もあるため、見通しはある。 その作業と並行して、ロシアの憲法現実を支えたと考えらえるロシア憲法裁判所の判決の検討を進める。すでに、第10条、第11条、第80条、第110条については、成果を公表してきたが、さらにそれを精緻なものにしつつ、他の条文に関する検討を行う。 2020年1月に提案された憲法改正に対する憲法学者による対案の動きがあり、そこでの議論は、1993年憲法評価にとって極めて重要な内容を含んでいる。そこでは、制度改革がなければ解釈論の十分な展開もないという出張と、1993年の精神は、現代立憲民主主義を具現化するものであり、それに基づく解釈論の構築こそ重要という考え方が対立している。これらを素材、憲法の条文と解釈という問題について検討を行う。 以上を、1993年憲法制定からのロシアの憲法現実の変容とロシアの憲法学の議論、憲法裁判所の判決という点から、分析する。その場合、憲法学者のなかでも、党に重要な、ゾルキン等について検討を進め、最終年との検討につなげていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、1653円である。生じた理由は、人件費・謝金を予定していたが、ドイツ語を習得しつつ、ドイツで出版された1993年憲法評釈の翻訳に着手したこと、物品費および旅費が予定より必要となったことから、人件費・謝金としての利用をしなかったので、多少の残額がでることになった。研究の進展とともに、資料も集まり、残額も少額であることから、資料整理のためのファイルの購入を予定している。
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