2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K01263
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
仁木 恒夫 大阪大学, 法学研究科, 教授 (80284470)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 司法書士 / 成年後見 / 紛争処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度である2021年度も、感染症の影響を受けて当初予定していた調査を実施することはできなかった。しかしながら、方法論については前年度まで再検討を進めてきた解釈法社会学について取りまとめる作業をおこなうとともに、実態調査研究については現在の状況でも実施可能な方法により資料収集とその分析をおこなった。 方法論については、定量的研究と親和性のある構造機能分析および定性的研究と親和性のある過程分析と比較しつつ、定性的研究としての解釈法社会学の特徴を「秩序と紛争」という観点から整理した。その成果の一部は共編著『新ブリッジブック法社会学』に所収の「社会秩序と紛争」として公表した。他の方法論と比較することにより、解釈法社会学がより効果を発揮する研究領域をあきらかにしている。 実態調査研究については、司法書士の紛争処理行動を知るための資料収集を簡易裁判所において実施することにした。約20件の法廷観察資料を収集整理しており、その一部を解釈法社会学的手法により分析した論稿「法的対論への本人の参加―簡易裁判所における弁論過程と紛争当事者―」を作成した。近く公表を予定している。専門職代理人が高齢の訴訟当事者と同行した口頭弁論での会話資料に基づいて、専門職が遂行する形式的手続のなかで、素人当事者がどのように参加を果たしていくのかをあきらかにしている。弁護士人口増加に加えて70%以上の司法書士が認定を受けており、専門性が高まっているなかで、なお簡易裁判所での当事者の手による紛争処理の可能性を探ろうとするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最終年度も感染症の影響を受けて、いくつかの点で研究計画を変更したが、国内では感染症を前提とした社会活動の範囲も広がってきたので可能なかたちでの関連調査研究を手探りでおこなった。 昨年度まで文献の見直しをおこなってきた解釈法社会学の方法論については、その特徴を明確にする論稿をまとめることができた。 しかしながら、高齢者と接する成年後見人司法書士にインタヴューや参与観察を実施するという、当初予定していた経験的資料の収集は、依然として困難であるため、これに代替する方法として、比較的入手しやすい公開法廷の観察記録の収集を行うことにした。すでに20件程度の経験的資料を収集整理しており、その一部を論文として取りまとめる作業もおこなった。 他方、昨年度実施できなかった海外での比較法社会学的な調査研究も今年度の研究計画に組みなおしたが、まだ実施できていない。 以上、感染症の影響で大きな制約があるため、これまで入手できた資料に基づいて、当初予定していた研究にできる限り近いかたちで成果が獲得できるように研究をすすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症の影響で、2020年度から実施することができなかった、国内外の調査が可能な状況になるようであれば、まずそれを実施する。 国内調査は成年後見業務に関連した紛争処理活動を手がけた司法書士への聞き取りおよび参与観察である。地方と都市部とで調査を実施し、両方の環境条件での紛争処理の実情を把握する。国外調査はアメリカのParalegalによる高齢者支援の実情についての調査である。 なお、制約があるなかで考案し実施してきた簡易裁判所の公開法廷での記録作成およびその分析は、ある程度は見通しがついたので、引き続き実施する。これまでの調査では、高齢の紛争当事者が同席している場面を何度か確認している。また、小規模独立簡易裁判所と大規模庁簡易裁判所とでは、手続運営において相違点も観察されている。こうした調査の成果は、少し異なる角度からになるが本研究にとって重要な知見を提供することが予想される。 以上の研究計画に依拠して、入手しうる資料に基づいて成果を取りまとめる。
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Causes of Carryover |
今年度も感染症の影響により、本研究の予定経費の多くを占めていた国内外でのインタヴュー調査および参与観察調査を実施することができなかった。そのことは計上していた旅費の使用金額に反映されている。ただし、昨年度の後半から、実施可能な調査方法にも着手し、研究を進めてきた。感染症のなかでも、少しずつ社会活動の範囲が広がっており、今年度は状況によっては予定されていた調査を実施したい。具体的には、夏期の長期休暇を利用して海外調査を、一応は予定する。しかしながら、すぐに以前のように戻るかは不透明であるので、現在進めている簡易裁判所での参与観察調査を中心に資料の収集・整理を続けていく。関西の諸機関を中心に調査をおこなうが、手続運営の比較も加味して、東京および地方での調査も予定している。不確定な要素があるが、確実に進めることができる調査研究を蓄積して、それを基礎に研究成果を取りまとめる予定である。
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