2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K01263
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
仁木 恒夫 大阪大学, 大学院法学研究科, 教授 (80284470)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 司法書士 / 成年後見 / 紛争処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、司法書士の成年後見業務と関連した領域での活動を解釈法社会学的手法で検討し、その実情を明らかにすることを目的としている。より具体的には、①司法書士の成年後見関連の活動と紛争処理関連の活動の研究と、②解釈法社会学の方法的研究とから構成されるものであった。 まず、司法書士の成年後見関連の活動と紛争処理関連の活動に関する研究は、次の3つの側面から実施された。第一に、司法制度改革以降の司法書士の裁判所での活動に関する統計上の特徴を明らかにした。第二に、事理弁識能力が十分ではない当事者の法的問題処理に関与した事例の検討を行った。そこには当事者それぞれの立ち位置からのズレがあり、そのズレを適切に維持する接触の機会の設定が重要であるとの見通しを得ている。第三に、裁判所での認定司法書士による代理の参与観察による調査研究を行った。専門職代理がなされる訴訟の場で当事者が参加の機会を確保する可能性を明らかにした。 また、解釈法社会学の方法的研究は、次の3つの側面から実施された。第一に、解釈法社会学の理論枠組に特有の紛争/秩序のとらえ方の特徴を明らかにした。第二に、解釈法社会学の方法に特有の、研究者自身の立ち位置の再定位を実験的に行った。第三に、解釈法社会学の方法論によって簡易裁判所での参与観察の会話データを分析した。 本研究は、多くの司法書士が関与している成年後見において、ソーシャルワーカー的な理解も持ちながら、接触のあり方の中で法的専門性を適切に活用していく必要性の見通しを獲得した。また、紛争事件においては司法書士の存在感はまだ十分にその潜在力を示すには至っていないが、簡易裁判所の法廷のような場で素人も参加する対論を実現する重要アクターとして期待されることが確認された。これらは、司法書士の成年後見及び紛争処理の領域での活動に重要な知見を提供する。
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