2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K01264
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大江 洋 岡山大学, 教育学域, 教授 (80308098)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 親の正義論 / 子どもの権利 / 子育てコスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、分配的正義論の具体化・応用問題である「子育てコストの社会的共有」に関する原理的指針の構築にある。子育てコストの増大化、およびそれに関わる子どもの貧困や子育ての困難などの社会問題を端緒として、児童福祉制度を中心とした社会保障制度改善への注目が集まっている。そこでの法哲学・政治哲学的課題のひとつは、子どもをめぐる種々のコストの社会的共有・分配問題である。受益者負担主義や親の子育ての自由などの根拠から、子育てに関わるコストのすべては親が担うべきなのだろうか。あるいはそのコストを社会的に共有すべきだとすれば、その正当化理由はどこにあるのか。果たして公共財の正当化手法が子育てコスト問題に適用可能なのか。フェミニズム的な観点から母親の子育てコスト・負担の軽減が原理的にも求められるのか。これらの問題は「親の正義(parental justice)」論とも呼びうるものであり、その理論的研究を多角的な視点から行う。 上記の研究目的に鑑み、親の正義論をひとつの柱として取り込んだ著作を発表した。大江洋、『子どもの道徳的・法的地位と正義論:新・子どもの権利論序説』(2020年、法律文化社)。同書第3章において、「親の正義論―子育てコストの共有問題」を執筆した。そこでは、子育てコストを正義論として考慮する必要性と、その正当化手法を検討した。正当化手法の内容としては、「おとな側の視点からのコスト共有説」と「子ども側の視点からのコスト共有説」に大別し、種々検討を行った。最終的には「子どもケアの公共化再論」というテーマでまとめを行った。
|