2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K01266
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Research Institution | Aomori Chuo Gakuin University |
Principal Investigator |
椎名 智彦 青森中央学院大学, 経営法学部, 准教授 (00438441)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 制度的適性 / 中立的原理 / 憲法判断回避 / プロセス法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元(2019)年度は,現代米国における対話的憲法秩序形成にとって,思想的・理論的基盤となるプロセス法学について,古典的文献および内外の先行研究を包括的にレビューした。この過程では,プロセス法学の創設に関わった20世紀中葉の米国の主要な理論家(F.Frankfurter, L.Fuller, L.Hand, H.Hart, A.Sacks,H.Wechsler,A.Bickel等)の間に存在した不一致点(司法審査制の淵源に関する理解,司法審査の根拠となる基本原理に関する理解,代表民主制と司法審査の関係に関する理解,司法審査を回避すべき状況の範囲,人種問題解決における司法の領分,等)について,特に意を用いて検討した。 これを通じて,法形成機関間対話の基礎となる「制度的適性」理論の趣旨,全体構造及び細部を,国内先行研究に比して一層明確化・精密化した。 また,この検討過程では,憲法理論の背景となる社会思想や科学哲学の時代的変遷についても留意し,戦後の日米憲法学の間に存在したと推測される,思想史的異同をも視野に入れた。いわば,戦後憲法学の骨格をなした理論像の精緻化と,その後,本邦の憲法学が取った,母法とは異なる独自の進路について,基本的方向性を再彫琢したといえる。 この作業は,研究代表者のこれまでの業績や,内外の先行研究を統合して,分析ツールとして同理論をアップデートしたことを意味している。また,この知見は,2020年度に予定している,2000年代以降の米国憲法実践分析の前提となる理論枠組みとなるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,上に示したプロセス法学研究について,年度内に論文化して公表するとともに,国内研究者からの批判的フィードバックを受ける予定であった。しかし,現時点で両方とも実現できていない。前者については,エフォート管理上の準備不足,後者については,新型コロナウィルス感染症の流行によって,予定していた検討会等が開催できなかったことが,それぞれ主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元(2019)年度および令和2(2020)年度に予定していた,国内外の研究者との対面での検討会は,ウェブを通じたものに切り替える予定。ただ,このうち,予定していた海外研究者の本務校が,イタリアおよび米国(ニューヨークを含む東海岸)に所在しており,それぞれの教育研究業務も,現時点では正常化の見込みが立っていない。これらについては,年度単位での延期も視野に入れつつ,スケジュール・計画を再検討する。他方,前年度実施分の成果については,2020年度内に,単著の形で公表する方向で準備を進めており,出版社とも具体的な協議を開始しつつある。社会の正常化の進捗状況によっては,こちらの単著の出版を,2020年度の中心課題とする予定である。
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Causes of Carryover |
前年度に支出予定であった旅費が,目的である検討会の延期・中止によって支出されなかった。新型コロナウィルス感染症の流行の終息状況を注視しながら,検討会の日程を再調整するが,これが不可能になった場合には,検討会そのものをウェブを通じたものに切り替える。その場合には,旅費そのものが不要となる。
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