2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on inheritance and land registration in French law
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19K01267
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
小柳 春一郎 獨協大学, 法学部, 教授 (00153685)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 相続登記 / 不動産登記 / 所有者不明土地 / 専門家 / 地籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究実績として,第一に,資料収集,第二に,論文・学会発表がある。 第一の資料収集であるが,フランス相続法,共有法(物権法),不動産登記法,地籍制度関連の資料収集を継続した。本研究は,最近の動きだけでなく,歴史的検討を行うものであり,19世紀にさかのぼる文献の調査,収集を継続した。 第二の論文・学会発表であるが,①「ナポレオン地籍と『地籍法令体系総覧』(1811年):基本原理・組織・測量」獨協法学115号,②「フランスの地籍修正とその訂正請求に関する裁判例[マルセイユ行政控訴院2013.6.25判決]」獨協法学116号は,一連の研究であり,所有者不明土地問題の原因ともいえる相続による所有者の変動が国家によってどのように把握されたかを地籍情報に基づき検討した。その結果として,所有者が売買によって変動した場合には,当事者による申告を待って処理することになっていたこと(申告があるまでは旧所有者に課税),これに対して,相続の場合には,当局が情報把握に務め,そのうえで,相続申告を慫慂するなどの措置があったことを明らかにした。ここでは,公証人等の関与がないことになり,その限りで,フランスでも,所有者死亡による(不動産税の)死亡者課税等がありえたことを明らかにした。 これに関連して,学会発表「近代地籍の源流としてのナポレオン地籍:基本原理・実施組織・測量・地籍修正」(第30回地籍問題研究会)において,土地調査においては,土地所有者の現状把握だけでなく,その変動の把握が重要であったことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の研究は,第一の資料収集ではこれまでと同様に順調に進行した。第二の論文発表等のアウトプットについてみれば,すでにこの問題についての著書を2020年度末に刊行した。さらに,不動産登記制度の意義(取引安全の制度か国土情報の基礎か)に関連して,地籍制度とのつながりを検討するようになった。2021年の民法・不動産登記法改正で,相続登記義務が課されることになったが,その実効性だけでなく,理論的意義も問題である。本研究課題は,フランスにおける相続時の実効性については,専門家の関与が大きな意義を持つこと,理論的意義としては,相続登記未了による土地取引上の混乱や登記専門家にとっての事務処理困難が重要であったことを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は,当初は3年で完結する予定であったが,コロナ危機等のために,海外出張が困難になったため,予算が大きくあまり,1年間の延長を申請した。今後は,表示登記制度の基礎である地籍における相続処理と登記における相続処理の関連を研究する。また,フランス語での研究成果発表を行う。
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Causes of Carryover |
本研究課題の重要な部分として,フランスにおける現地調査があったが,コロナ危機のために,それが実施困難になった。2022年4月以降,各国でいわゆるwith coronaの情勢になり,海外渡航等が解禁されつつある。これを活用して,本研究の成果を確実なものとするのみならず,日本の今回の民法・不動産登記法改正についてフランス語による論文を発表したい。なお,2022年4月末には,獨協法学117号に,登記法改正についての仏文論文を刊行する予定であり,さらに,現在執筆中の共有法改革についての仏文論文も今年度中に発表する予定である)。
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Research Products
(4 results)