2019 Fiscal Year Research-status Report
専門訴訟での規範形成過程とその制度的・人的体制の実証的・比較法的研究
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19K01270
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
渡辺 千原 立命館大学, 法学部, 教授 (50309085)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 医療過誤訴訟 / 医療ADR / 専門訴訟 / 訴訟を通じた法形成 / 家事事件訴訟 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、初年度として、司法改革後における専門訴訟の扱いについての大きな動向を検討した。本研究では、専門訴訟類型として、医事事件、家事事件、知的財産関係事件を対象とした検討を計画しているが、医事事件と家事事件の扱いについての研究を先行させた。 医事事件については、近年は新しい最高裁判決は少なく、医療過誤訴訟の提起自体もピーク時に比べるとかなり減少しているが、医療事故や紛争自体が減っているとは考えがたい。そこで、新たに発足している医療事故調査制度や、紛争解決のための医療ADRの調査を行った。それらの制度にとっては、訴訟がどのように位置づけられているかや、それらの制度と訴訟との連携可能性についての検討を行った。医療事故調査制度と紛争解決の連携については可能性はあるものの、訴訟につながることへの懸念が強く、むしろ裁判とは完全に分離するようなしくみである必要性もうかがえる。他方で、医療ADRは優れた制度であっても資金難などの問題を抱えるが、訴訟手続きにおいても有用と思われる手続きや人的資源の活用もあり、今後の訴訟手続改革にも一定の示唆が得られるとの見込みを得た。 家事事件については、家庭裁判所制度の研究に先立って、比較的活発な判例形成がなされている最高裁の判決動向についての分析を行った。手続面の検討はこれからになるが、家事事件における最高裁の判断は少数意見も含めて、家事実務を牽引していることが確認できたため、その適正化に向けて何を検討すべきかについての一定の見通しを持つことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、別の研究課題の最終年度のまとめにかなり尽力したことから、本研究課題へのエフォート率が想定よりも低めになっていた。 また、研究する中で本研究にとって有望と思われる医療ADR調査や、高等裁判所調査などインタビューや訪問を伴う調査が、2020年の2月半ば以降は新型コロナウィルス感染拡大防止のため実施が難しくなっているため、研究の進捗が少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、本課題を最優先に研究に取り組む予定である。まだ、文献調査研究も十分に進んでいないため、文献研究を優先して進めていく。 インタビュー調査や訪問調査については、対面調査から電話やオンライン調査等に切り替えることを検討したい。本調査の中心課題ではなかったが、裁判のIT化は、裁判所政策としても重要課題になり、現在その推進がなされ、裁判手続の変容も急速に進むことが見込まれるため、こうした新たな動向が専門訴訟の運営において与える影響や、事件類型に適合的なIT化の在り方も視野に入れて研究を進めることで、時宜にかなった研究を行うことができると考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度最終年度の研究課題のまとめや、他の研究課題の取り組みのために、本研究課題で予定していた調査への取り組みが2020年に入ってからに遅れていたところ、新型コロナウィルス感染予防が必要となり、予定していた国内出張や海外調査に行くことができなくなった。文献研究も既存の文献調査を先行しており、新たな文献の収集に至らなかった。 国内外の移動を伴う調査については2020年度についてはより一層困難となることも見込まれるため、当初予定通りに次年度送りでの使用という形ではなく、研究手法自体の見直しも行う。その分の、オンラインでの調査のための環境整備や文献収集やデータの整理などに次年度使用として用いる予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Book] 現代日本の司法2020
Author(s)
市川正人、大久保史郎、斎藤 浩、渡辺千原
Total Pages
532
Publisher
日本評論社
ISBN
978-4-535-52474-3