2019 Fiscal Year Research-status Report
神戸における企業弁護士業の生成と展開─元最高裁判事・山田作之助を中心に─
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19K01271
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
小松 昭人 神戸学院大学, 法学部, 教授 (00315037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻村 亮彦 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (30547823)
下村 太一 神戸学院大学, 法学部, 准教授 (70548164)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 弁護士 / 企業法務 / 神戸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神戸で活躍した企業弁護士で最高裁判事も務めた山田作之助の旧蔵書および文書等資料(以下、「山田作之助関係資料」と呼ぶ。)を利用し、昭和期神戸における企業弁護士業の形成過程を、当時の政治経済・社会状況や、顧問先の企業もしくは企業経営者との関係を踏まえ、解明することにある。 今年度は、昭和戦前期の神戸における企業弁護士業の実態を明らかにするため、昭和6年の再整理以降、再建の一環として川崎造船所が多数の株主・旧株主を相手取って神戸地方裁判所に提起した株金払込請求・不足金請求訴訟を対象に、山田作之助関係資料中の『第7次以下不足金請求名簿』、不足金請求訴訟判決正本その他の史料を分析した。 その結果、第一に、資料がカバーする第7次から第11次にかけての請求において、約1,200名の株主・旧株主に対して株金払込または不足金支払を請求したことや、後次の請求に及ぶにつれ、保有株式数や請求金額が少なくなる傾向が明らかになった。第二に、多数にのぼる株金払込・不足金請求の業務を、山田を中心に、神戸で活動していた2名の若手弁護士と分担していたことがわかった。最後に、不足金請求訴訟については、被告側は、民事調停や和解で条件を定めた上で不足額を支払う、第1回口頭弁論期日に欠席する、いわゆる手元不如意の抗弁を提出する、不足金請求に係る株式について他に譲渡したと主張する、といった対応をしていることも、明らかとなった。 以上の成果は、所属研究機関において2020年2月29日に開催を予定していた研究会で報告する予定であった。しかし、折からの新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、所属研究機関の指示に従い、研究会の開催を中止した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、山田作之助関係資料の保管場所となっていた建物の取壊計画が具体化し、同資料を移設する必要が生じた。このため、新たに保管場所を確保し、同資料を移設することとなったが、作業の都合上、資料を閲覧することができない状況が一時期続いた。
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Strategy for Future Research Activity |
山田作之助関係資料については、今年度中に移設作業が完了し、新たな保管場所において同資料の閲覧が可能となった。移設作業により一時的に資料を閲覧することができなかったが、研究分担者の協力を得て、移設作業の過程で同資料の再整理を行い、従来よりも同資料を利用しやすい環境を整えることができた。 今後は、研究分担者とともに、昭和期神戸の企業弁護士の業務の実態や関西財界との関係といったテーマについても、同資料の分析を集中して行いたい。さらに、山田作之助関係資料の分析と並行して、今後、他の研究機関等において関係する資料の閲覧・収集を行う。
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Causes of Carryover |
当初、購入を予定していた物品(資料整理箱)が生産停止により購入できず、代替品の調達も間に合わなかったため。 なお、次年度使用額については、購入を予定していたものと同等の資料整理箱の購入に充てる予定である。
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