2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K01273
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Research Institution | Maizuru National College of Technology |
Principal Investigator |
兒玉 圭司 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10564966)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 行刑史 / 監獄 / 刑事施設 / 被収容者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治期に作られた監獄制度の様々な帳票(言い換えるならば“ものさし”)に着目し、①“ものさし”を作る人・測る人への着目―司法・内務官僚や典獄(刑務所長)の学識・キャリアの分析、②“ものさし”で測られる人々の追跡―被収容者の属性(年齢・犯罪歴等)の把握、③“ものさし”自体の成り立ちの検証―個票・統計の書式とその根拠法令の典拠や変遷の確認を通じて、従来とは異なる観点から明治の監獄を読み解こうとするものである。 昨年度に着手した①に続いて、本年度は②被収容者の属性(年齢・犯罪歴等)やその変遷を把握する計画であったが、「現在までの進捗状況」欄に記す通り、今年度は文献・史料調査を行う機会が非常に限られてしまい、研究を進める上で必要なデータを揃えることができなかった。そのため、史料・データの収集や、論文執筆は、次年度以降の継続課題となっている。 今年度の成果としては、オンラインで入手できる文献・統計情報の収集という基礎作業を行ったことに加え、本研究と直接的に関わるものではないが、昨年度の研究成果である福島至ほか編『團藤重光研究―法思想・立法論、最高裁判事時代』(日本評論社、2020年2月)所収・拙稿「團藤文庫『警察監獄学校設立始末』から見えてくるもの-明治32年・警察監獄学校の設立経緯」(175-197頁)において利用した『警察監獄学校設立始末』をオンライン上で公開し、その解説を記した(龍谷大学矯正・保護総合センター、https://rcrc.ryukoku.ac.jp/dandoubunko/kangoku.html、2021年5月17日最終閲覧)こと、大警視川路利良研鑽会編『大警視だより』(続刊11号、2021年1月)でも同史料を紹介したことなど、研究成果・新出史料の周知・公開に努めたことが挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、本務校では感染拡大地域への出張自体が禁止されており、本研究の成否にかかわる史料の収集を一切行うことができなかった。また、文献・資料収集のため普段利用する図書館・資料館も、入館制限や閉館などの措置をとっており、文献へのアクセス自体が極めて困難な一年間であった。 加えて、本務校では遠隔(リモート)授業への対応や、同感染症対策、さらには環境の変化に伴う学生の心身の不調への対処など、膨大な量の業務が新たに発生し、研究のために割ける時間が極めて乏しかったことも、研究の進捗に大きな影響を及ぼした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の本欄にも記したが、本研究を進める上で深刻な問題が2つ存在する。一つは、①新型コロナウイルス感染症の影響により、本研究に必要不可欠な史料調査・文献収集、さらには研究報告の機会が大きく制約されていることであり、この状況は次年度以降も劇的な改善は見込めそうにない。もう一つが、②計画申請時にはアクセス可能であった史料群に、所蔵機関の事情が原因でアクセスできなくなっていることである。こちらについては現在、史料の所在は把握できているものの、やはり次年度中に閲覧できる見通しは立っていない。 そこで次年度は、すでに公刊されている文献・統計、およびインターネット上でアクセス可能な史料を用いて、つまり当初予定とは異なるアプローチによって、研究計画に記した内容を考察していきたいと考える。少なくとも、各種統計を用いることによって、今年度予定した「被収容者の属性(年齢・犯罪歴等)の把握」はある程度可能であると思われ、まずはこの点から研究を進めてみたい。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、本務校では感染拡大地域への出張自体が禁止されており、本研究の成否にかかわる史料の収集を一切行うことができなかった。また、文献・資料収集のために利用する図書館・資料館が、入館制限や閉館などの措置をとっていたこと、研究代表者が主に活動する学会の例会・総会等も中止・延期され、研究発表を行う機会が得られなかったこと、などから、出張旅費および史料収集・分析にあたる研究協力者の謝金を使用する機会を得られなかったことが主な理由である。 次年度は、資料所蔵機関や学会・研究会への出張がある程度可能になれば、出張旅費を使用して、研究の遅れを取り戻したいと考えている。それが叶わない場合には、公刊された統計書等、書籍を購入することによって、研究のための資料を補いたいと考えている。
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