2019 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study of the Democratic (Political) Constitutionalism after Brexit
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19K01279
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
愛敬 浩二 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (10293490)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イギリス憲法 / 比較憲法 / EU離脱問題 / 国会主権 / 政治的憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
EU離脱までの政治過程・政治論議において、政治的に濫用された「国会主権」の原理に関するイギリス憲法学の議論状況を調査した。その際、同原理の重要性を強調して民主主義的な憲法学の構築を目指す政治的憲法論者(特にKeith EwingとMichael Gordon)がEU離脱問題との関係でどのような国会主権論を展開しているのかを検討した。その研究成果の一部として、「EU離脱問題後のイギリス憲法学における政治的憲法論」を公表した。 また、上記の研究活動の成果の一部は、2019年9月5-6日にエディンバラ大学法学部で開催された比較憲法セミナーの際、Michael Gordon教授(リバプール大学)の研究報告に対するコメント報告"Contrasting Situations in the UK and Japanese Constitutional Discourse?"の中で公表した。その中で私は、イギリスではEU離脱問題があるにもかかわらず、政治的憲法論の復権が語られる一方、学界のみならず、政党やメディアにおいても民主主義憲法学の不振があることを指摘し、その理由の分析と課題の提示を行った。 エディンバラセミナーに続いて、2020年3月に名古屋大学において比較憲法セミナーを実施し、その場で前記コメント報告に日本側の状況の詳細を加えた研究報告をする予定であったが、新型コロナウィルス問題の影響により、同セミナーは中止となった。ただし、この研究報告の内容は、可能であれば2020年度中に開催される比較憲法セミナーでの検討を経て、セミナー実施が困難である場合は、イギリス側の共同研究者との討議を経て、できるだけ速やかに公表する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EU離脱問題後の政治的憲法論の議論状況についての見取り図を論文のかたちで公表し、その研究成果を踏まえて、イギリスの憲法学者と議論を深める機会を得たので、少なくとも2019年中の研究は順調に進んでいたが、2020年1月以降は新型コロナウィルス問題の下、国際セミナー実施に関する調整に時間をとられ、結局、延期せざるをえなくなった。ただし、個人レベルでの理論研究は継続的に実施できており、来年度に向けた研究課題も明らかになってきている。 以上のことから、研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
EU離脱問題後の政治的憲法論の動向に関するこれまでの研究成果を、イギリス側の共同研究者との議論を踏まえて、2020年度中に論文のかたちで公表する。その際、2019年12月の総選挙の結果とプロセスをいかに評価するかという問題を重視して検討する。 また、EU離脱問題以降の政治的憲法論者の中には、Jeremy Corbyn率いる労働党への期待感もあったと推測されるが、世界的に右派のポピュリズムが台頭しているようにみえる時代状況の下で、政治的憲法論のような民主主義憲法学の意義と課題がどこにあるのかを、イギリスと日本の政治状況・理論状況の比較を通じて明らかにする。この研究成果の一部を可能であれば、国際セミナー等で報告をして日英の研究者のコメントを求め、できるだけ速やかに論文のかたちで公表する。 なお、イギリス側の共同研究者との比較憲法セミナーを2020年度中に日本で実施することを計画中であるが、新型コロナウィルスの影響で実施が困難である場合は、遠隔会議での実施についても検討する。
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Causes of Carryover |
2020年2月~3月の間に資料収集と意見交換のための国内出張を計画していたところ、新型コロナウィルスの影響で国内出張を中止せざるを得なくなったため。 2020年度に国内の移動が可能になれば、できるだけ速やかに資料収集と意見交換(特に後者)のための国内出張を実施したいので、その際に使用する予定である。
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