2022 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Study of the Democratic (Political) Constitutionalism after Brexit
Project/Area Number |
19K01279
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
愛敬 浩二 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10293490)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イギリス憲法 / 1998年人権法 / 政治的憲法論 / 憲法論議 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は前年度同様、保守党を震源地とする1998年人権法の廃止・改正という政治問題を背景とした憲法理論の動向の分析に取り組んだ。とりわけ、最高裁判事に在職中から1998年人権法を批判する講演等を行って法曹界のみならずメディアからも注目されていたJonathan Sumptionの議論を政治的憲法論との関係で比較検討することにより、現在のイギリス憲法学の理論状況に関する見取り図を描くことができた。その成果を「現代イギリスにおける『人権法体制』批判の比較憲法的考察」と題する論文して公表した。 学問分野においても、Richard Ekinsオックスフォード大学教授を中心にする司法権プロジェクト(Judicial Power Project 以下、「JPP」と略す)がヨーロッパ人権条約体制と1998年人権法に対する厳しい批判を展開しており、「イギリス司法の積極主義化」が政治的・理論的争点になっていることが確認できた。JPPは従来の左派的な政治的憲法論との「共闘」をねらっており、左派系の憲法学者の中にも保守系のJPPの司法権批判に同調する論者がいることが確認できた。その調査結果を従来の左派系の政治的憲法論(機能主義公法学)に関する研究成果と関連付けて、「イギリスにおける司法毛批判の系譜と現在」と題する論文として公表した。 研究機関全体を通じた研究成果としては、EU離脱レファレンダム以降、歴代保守党政権が国王大権による離脱通知や国会閉会など憲法上疑義のある手段をとったため、最高裁が司法審査を使って「違憲」判決を出す事態が生じ、「イギリス司法の積極主義化」が政治的・理論的争点となったことから、イギリス憲法学において政治的憲法論をめぐる論争が深まったため、最終年度には研究課題との関係で一定の成果と自負できる論文を2本公表することができた。
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Research Products
(3 results)