2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K01280
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仲野 武志 京都大学, 法学研究科, 教授 (50292818)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 行政法 / 行政作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、まず、制裁としての性格を有する金銭の納付を命ずる処分に関する規定が国にも適用されるかについて検討した。砂防法の過料(いわゆる執行罰・間接強制金)に関する規定、障害者の雇用の促進等に関する法律の障害者雇用納付金に関する規定及びアルコール事業法の納付金に関する規定は、明文で、国には適用されないこととされている。このこととの均衡に照らすと、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の課徴金に関する規定も、国には適用されないと解される。 次に、罰則は、帝国憲法下では、国の行為と官吏の行為を区別することなく、およそいずれの行為にも適用されないと解されていた。これに対し、現憲法下では、国の行為と公務員の行為を区別した上、刑罰権の主体たる国自らには適用されないが、公務員には適用されると解されるに至っている。私人たる法人の役員又は職員がしたとすれば処罰される行為であるにもかかわらず、たまたま公務員がした場合には処罰しないこととするのは、偏頗というほかないからであろう。 具体的には、(旧)鉱業法、工場法、労働基準法、船舶安全法、電波法、補助金等に係る予算の執行の適正化等に関する法律等を素材として、国それ自体に罰則を適用することができない理由について検討した。 これに加えて、研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、まずもって、行政法学界全体としてこれまで必ずしも多くの先行業績があったとは言い切れない行政上の公表について、いわゆる制裁に当たるものとそうでないものの区別を、刑事法との関係に鑑みて考察したことが挙げられる。続いて、好んで正当防衛と比較されるが、やはり立ち入った考察がなされてこなかった防衛出動時の武力行使その他の自衛隊の実力行使について、国際刑事法との関係も視野に入れつつ、どこまで刑事法の学説を行政法に摂取することができるのかについて包括的な分析を行った。
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