2021 Fiscal Year Research-status Report
シャウプ勧告は日本の租税・行政手続をどう変えたのか?
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19K01281
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
渕 圭吾 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90302645)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 行政手続 / 手続保障 / 国家管轄権 / 憲法 / 行政法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年目にあたる2021年度も、COVID-19の世界的な流行に伴い、出張を伴う資料の調査ができなかった。そこで、2020年度に行った租税実体法と租税手続法の関係に関する考察を発展させて、デュー・プロセスの考え方が国家管轄権の限界を定めている、というアイデアを中心に研究を行った。 具体的には、まず、国家管轄権との関係で正当化しうる租税実体法の限界につき、欧州各国が導入しつつあったデジタル・サービス税を素材として検討した(RIETIワーキング・ペーパー。その後、民商法雑誌)。その性質において消費に対する租税なのか、所得に対する租税なのか、という点を曖昧にしたまま、新たな租税を導入することは望ましくないということを主張した。次に、信託を素材として、裁判管轄権の限界につき、アメリカ合衆国における問題状況を素描した(信託研究奨励金論集)。信託の中心に受益者を据えるのか、受託者を据えるのか、という点に応じて、管轄権の及ぶ範囲が異なってくる、という現状が明らかになった。さらに、租税の徴収を納税義務者でない者に行わせることがどこまで正当化できるかという問題を消費税・付加価値税を素材として検討した(Japanese Yearbook of International Law)。ここでは、国家と徴収義務者との関係、及び、徴収義務者と納税義務者の関係の双方において、一定程度の密接性が要求されるのではないかという立場から考察を行った。最後に、より一般的に、公益の実現に携わる私人のあり方について考察した(法律時報2021年8月号、2022年1月号)。なお、制定法の解釈に関する最高裁判決の動向についての小文の記述を改善した(租税判例百選第7版)。また、本研究の初年度に公表した英語論文の日本語版(仮訳)をResearchmapに掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相変わらず出張をすることができず、当初予定していた文献の調査ができていないものの、初年度に公表した論文の内容を発展させて、憲法・行政法・国際法にわたる知見を少しずつであるが得ることができている。また、研究業績も英語論文を含めて数本発表することができている。このため、上記のような進捗状況と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本来は、2021年度が最終年度ということになっていたが、COVID-19の流行に伴い、研究期間を延長した。2022年度においては、引き続き海外出張が容易にはできないことを前提に、これまでの研究を発展させて、デュー・プロセスと国家管轄権に関する知見を得るとともに、財産権保障の問題をも視野に入れて研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
海外出張ができなかったため。次年度、研究内容をも勘案して、効用が高い用途である書籍等の購入を中心に利用したい。海外出張が可能に成る場合には、その用途に用いる可能性もある。
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Research Products
(8 results)