2020 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ国法学上の国家憲法と宗教憲法の衝突の観点からみた現代的宗教問題の検討
Project/Area Number |
19K01285
|
Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
三宅 雄彦 駒澤大学, 法学部, 教授 (60298099)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 宗教憲法 / ドイツ国法学 / プロテスタント教会法 / 国家教会法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民主主義や法治国家の構造を持つ政治憲法と、これらとは異質で、寧ろ民主主義や法治国家に反する構造を持つ個別秩序、それぞれを全体憲法と部分憲法と名づけ、この政治憲法と、部分憲法としての宗教憲法との関係を問うものである。今年度は、体系的作業として、全体憲法と部分憲法の関係それ自体を具体例に即して取り扱う作業を、もう一つには、歴史的作業として、この視座の基盤を構築したスメント憲法理論を分析する作業を、前年度に引き続き行い、さらには、最高裁判所大法廷令和3年2月24日判決(沖縄孔子廟判決)を契機として、これを検討することで、日本国憲法への応用可能性を検討する準備作業も行った。 第一の、体系的作業としては、同様の対立構造を顕著に示す、全体憲法たる国家憲法と、部分憲法たる国際憲法又は欧州憲法の対抗を探るべく、2010年から12年のいわゆるユーロ危機に対する連邦憲法裁判所の諸判決、及び、その後の欧州金融政策に対して欧州法違反を指摘した2020年5月5日の同裁判所のPSPP判決を検討する作業、並びに、基本法33条5項に関する連邦憲法裁判所の判例法理を素材として、職業官僚制を持つお国家憲法の基本構造を分析する作業を行った(いずれも、公表済み)。但し、今年度も、単なる整理作業の部分を衡量するにとどまり、肝心の全体憲法と部分憲法への分析作業は不十分となってしまった。 第二の、歴史的作業としては、スメント憲法理論に内在する国家憲法と宗教憲法の対抗関係の資材を獲得するべく、1957年の連邦憲法裁判所のコンコルダート(国家教会条約)判決と、それに対するスメントの評価について検討作業を行った。なお、その際、コンコルダート判決及びその背景となるこの条約をめぐる政治的対立自体が複雑であることもあり、研究成果の公表は、この1957年判決それ自体の分析にとどまっている(駒澤法学において公表済み)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国家憲法と宗教憲法の対立構造を検討する基礎作業として、全体憲法と部分憲法の関係一般、更には、その具体例としての国家憲法と国際憲法の関係、或いは、国家憲法それ自体に内在する職業官僚制の構造、それぞれに関する基礎的検討については、今年度も概ね順調に研究を進めることができた。とりわけ、スメント憲法理論の歴史的検討ンいおいては、彼の国家憲法と宗教憲法の対抗関係についての理解を、コンコルダート判決という、基本法制定直後からドイツ政治の重要事項(再軍備問題やドイツ共産党問題と並ぶ)に関する判決の検討を踏まえた上で、ヨリ具体的に得ることができた。 しかしながら、当初、福音主義教会及び国家教会に関する具体的問題の検討については、本研究の枠内で計画していた、ハンス・ミヒャエル・ハイニヒ教授(ドイツ・ゲッティンゲン大学法学部)を日本に招待した上での、同教授との共同研究など、ドイツ研究者との共同研究が、今年度においても、コロナ禍により中止になってしまったことにより、進行が遅れている。コロナ禍の収束が見えない中で、今後の対応を検討したいが、とはいえ、ハイニヒ教授とは、研究計画について意見交換を継続している。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度も引き続き、一つには、全体憲法と部分憲法との関係、国家憲法と宗教憲法の関係の分析作業を引き続き進め、二つには、その対抗関係を示す具体例を、連邦憲法裁判所の判例を検討することで、これに検討を加える予定である。前者としては、全体憲法と部分憲法に関わる、国際憲法や欧州憲法など関連する事例の検討や、スメントの憲法理論及び教会法学の、その歴史的文脈を踏まえた上での分析作業を計画している。 他方で、今年度来日予定であったハイニヒ教授、更には、さらには、フランク・ショーコプフ教授(ドイツ・ゲッティンゲン大学法学部)、マティアス・クナウフ教授(ドイツ・イエナ大学法学部教授)にもドイツ又は日本で共同研究を行う予定である。しかしながら、今後のコロナ禍の動向が不明であり、研究代表者のドイツ渡航、及びドイツ人教授の来日に関わる研究計画については、これらドイツ人教授と連絡をとりつつ、実現可能性そのもの、及びその善後策について再検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
主としてコロナ禍のために、ドイツ人研究者の日本渡航費用、研究代表者のドイツ渡航費用が執行できなくなった。
|
Research Products
(4 results)