2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Construction of the Effective Remedy System for Human Rights by Multi-Layered Actors
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19K01287
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
金子 匡良 法政大学, 法学部, 教授 (50462073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 公士 神奈川大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (80145036)
嘉藤 亮 神奈川大学, 法学部, 教授 (90586570)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人権救済 / 差別されない権利 / 構造的差別 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画では、2021年度は本研究の最終年度にあたり、これまでの研究成果を総合して、実効的人権救済の方法論及び制度論の標準形を見出し、それを日本法へと接合するための理論的・制度的な課題を析出することを予定していたが、2020年度に引き続き、コロナ禍の中で特に国内外の現状調査ができなかったため、文献研究及びゲスト講師を招いた研究会を開催し、個別的な人権課題に関する救済論のあり方について研究を深めた。 具体的には、研究代表者の金子は、従来の差別救済論が差別的取扱いの是正に偏してきたとの問題意識から、人間の尊厳を回復するための「差別されない権利」の権利性およびその憲法上の位置づけについて研究した。研究分担者の山崎は、原発事故避難者の権利回復策のあり方について研究し、政策形成訴訟が人権救済に果たす役割や、国会・メディア等による予防的な事前対応が果たす人権救済機能について研究を行った。研究分担者の嘉藤は、行政による不利益処分に対する救済の一環として、不利益処分を行う際の理由付記のあり方について、特に障害年金法における理由付記の程度を素材に取り上げて研究を行った。 これらに加えて、ゲスト講師を招いた研究会を開催した。まず、コロナ禍がもたらした人権課題について検討するために、近江美保子・神奈川大学教授をゲストに招き、「COVID-19とジェンダー-コロナ危機と構造的差別」と題して報告を受けた。また、人権救済論が前提とすべき社会認識について、窪誠・大阪産業大学教授をゲストとして研究会を行い、J.S.ミルの功利主義を土台とする社会認識が社会工学やサイバネティクスと結びつき、人権抑圧的な社会認識を生み出していることの問題性について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に引き続き、2021年度もコロナ禍のため当初の研究計画で予定していた国内外の実施調査をまったく行うことができず、文献研究およびゲスト講師を招いての研究会の開催などを通じて実効的な人権救済のための法理論及び方法論に関する研究を深めた。 コロナ禍の中で、研究計画の停滞を余儀なくされた反面、コロナ禍によって女性や経済的弱者等への構造的差別の問題が浮かび上がり、そうした問題とその被害を被っている人びとに対する実効的救済のあり方を研究対象に含めることができ、研究内容の幅を広げることができた。 その一方、本研究の最終年度にあたる2021年度中には、所期の研究計画を達成することは難しいため、本研究計画を2022年度まで延長することとし、また計画していた国内外の実地調査はすべて中止することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間を2022年度まで延期し、これまでの研究成果を集約した上で、実効的な人権救済のための理論を法理論と制度論・政策論に分けてまとめていく予定である。そこでは、各法分野における人権救済の法理と制度・政策を一般論と具体的事例に則した個別論に分けてまとめることを予定している。 研究代表者の金子は憲法分野を、研究分担者の山崎は国際法分野を、研究分担者の嘉藤は行政法分野をそれぞれ担当するが、これだけでは足りないため、ゲスト講師を招いて他の法分野における人権救済論についても研究を深めることを計画している。具体的には、不法行為法、国際経済法、ジェンダー法、医事法、子ども法の専門家をゲスト講師として招く予定である。 その上で、これらの研究を総合して、2022年度末までに本研究の集大成となる出版物(『人権の法構造と救済システム』(仮題))を刊行することを目指している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、2020年度に引き続き、国内外の実情調査を行うことができなかったため旅費として計上した費用を中心に予算残額が発生した。 2022年度は、研究成果の公表に向けて、引き続き文献研究等を行うとともに、本研究計画のメンバーだけではカバーできない法分野の研究を行うために、ゲスト講師を招いた研究会を複数回行うことを予定している。
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[Book] 現代の部落問題2022
Author(s)
朝治武、黒川みどり、内田龍史、金子匡良他
Total Pages
550
Publisher
解放出版社
ISBN
978-4759241303
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