2021 Fiscal Year Research-status Report
政治部門の憲法解釈による事実上の憲法改正とその限界に関する研究
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19K01289
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
手塚 崇聡 中京大学, 教養教育研究院, 准教授 (30582621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大林 啓吾 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70453694)
白水 隆 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (70635036)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 公法学 / 憲法学 / カナダ憲法 / アメリカ憲法 / 生ける樹理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目である2021年度は、昨年度までに得られた研究実績(「事実上の憲法改正」の状況とその要因の分析、司法権による時代状況への憲法解釈による対応の状況整理)を踏まえ、英米諸国における時代に対応する事実上の憲法改正動向とそれに対する学説の分析を行った。当初年2回の研究会を予定していた通り、8月と12月に研究会を行ったが、いずれも対面で行うことは困難であったため、オンラインにて実施した。これらの研究会においては、アメリカ・カナダの政治部門における「事実上の憲法改正」に関する実態、また憲法上の議論状況に関する情報共有を行い、またその問題と日本への示唆に関する議論を行った。また2021年3月には、Jonathan Hafetz教授(Seton Hall University)を中京大学に招聘して研究会を行い、アメリカ憲法を踏まえた本研究に関する情報提供を行ってもらうとともに、具体的な問題に関する議論を行った。そしてこれらの成果を踏まえて、アメリカ・カナダ両国における「事実上の憲法改正」に関わる実例を整理するとともに、憲法上の議論についての検討を行い、その成果を公開した。特にアメリカでは、憲法変動、憲法的ハードボール、憲法解釈の3つの観点から分析することが可能であること、またカナダでは、ステルス憲法改正という議論がなされていること、またそれらの議論を踏まえると、日本の議論が特定の条文に関わる極めて限定された内容で行われている可能性があることを指摘した。以上のように、本年度はアメリカ・カナダの政治部門における事実上の憲法改正の実態と議論、さらにはその問題などについて、学説を踏まえつつ、実践状況の問題を明らかにし、延長した最終年度の日本との比較検討のための視座を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要でも示したように、本年度は2回の会合で研究者間での情報共有を行うだけでなく、研究者の招聘と研究成果の公表などを行った。そのため、2021年度の研究自体は順調に進んだといえる状況にある。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大による2020年度の研究計画の遅れが影響し、当初計画していた研究を完了するまでには至らなかった。すなわち、当初は最終年度中に、英米諸国における時代に対応する事実上の憲法改正動向を整理し、日本の議論状況を踏まえつつ、具体的な示唆の提供を行う行うことを予定していたが、2020年度の研究計画の遅れが影響し、当初予定していた、日本における近時の議論への示唆を十分に提供することができなかった。そのため研究計画を変更し、研究期間を1年間延長することとした。 もっとも、研究実績の概要でも示したように、本年度中にアメリカ・カナダの政治部門における「事実上の憲法改正」状況を明らかにしたこと、またその憲法上の問題点を整理・検討したことは、本年度の研究成果である。そしてそのことから進んで、日本の議論に関する一定の問題状況を指摘できたことで、本研究を完了させるための十分な視座を構築することができている。 以上のことから、本研究はやや遅れている状況にはあるものの、研究期間を延長したことで、十分に研究を完了することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間延長により、最終年度となった2022年度は、これまでの研究成果を踏まえ、またさらに、英米諸国における最新の議論状況を踏まえながら、日本における近時の議論への示唆を行う予定である。特に英米法諸国における「事実上の憲法改正」に関わる議論状況の日本への応用の可能性についても、積極的に検証を行っていく予定である。 なお、海外調査に関しては、新型コロナウイルスの影響で、現地での文献調査や研究者等に対するインタビューは困難であると予想されるが、国際学会への参加等も含めて、オンラインで積極的に行うことを予定している。また研究会についても、新型コロナウイルスの感染状況にもよるが、対面での開催も検討している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、予定していた国内・国外出張が実施できないなどによって、研究計画に大幅な変更の必要が生じ、また研究期間についても延長の必要性が生じた。なお、本年度使用できなかった研究費については、次年度の国内出張に充てる予定であるが、新型コロナウイルスの影響を鑑みながら、より慎重に計画を立てながら、適切な執行に努める。
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Research Products
(5 results)