2019 Fiscal Year Research-status Report
リスク統御モデルの議会法理論――秩序形成のネットワーク化と動態的知識形成
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19K01301
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
赤坂 幸一 九州大学, 法学研究院, 教授 (90362011)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 議会法 / 政党 |
Outline of Annual Research Achievements |
議会立法を結節点とする従来の秩序形成プロセスに対する、あらたな秩序形成プロセスの発生メカニズムやその背景、機能条件を探る本研究課題において、主に政党という従来の秩序形成アクターに着目し、その活動のあり方を憲法上規律する可能性について検討した。具体的には、「政党本位・再考」憲法研究第5号(2019年)49-59頁、「近代国家の三層モデル:ネットワーク国家」法セミ773号(2019年)75-79頁、「政党をめぐる憲法秩序・補遺」法セミ772号(2019年5月号)72-77頁、「政党をめぐる憲法秩序」法セミ771号(2019年4月号)100-105頁において、政党間の公正な競争ルールを通常の政治プロセスから切り離して憲法典上に規律する可能性について予備的考察をおこなった。とくに政治資金の分配や公費助成の拡大による既存政党のプレミア(カール・シュミット)の問題について議論の蓄積のあるドイツ公法学の政党法政に関する近年の理論的進展について検討を加えている。 特に注目したのは、政党助成等の国家資源にアクセスしうる政党を国家が公認し、この国家化された政党が――新進政党・萌芽政党の犠牲において――市民社会で優位に政治活動を遂行する場合には、政党間の公平な競争構造が失われ、政治過程の開放性が損なわれる、という点である。デジタル情報技術の進歩により統合過程を伴わない内発的・創発的な秩序形成が行われる局面が次第に顕在化したこと、また価値観が多様化したことが相まって、既存の包括政党は社会的基盤・集団との紐帯を喪失しつつある。その補填を国家に求めたことが、政治過程の開放性を危殆に陥れるという関係が、そこに認められるのであって、国家と社会をつなぐ道管としての政党のあり方について再考する必要があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな秩序形成プロセスの拡散現象について考察するために、従来の秩序形成・統合の主体として主に想定されてきた政党のあり方について、新たな観点から検討を加えることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
VUCA性をもつリスク決定を主に取り上げ、内外の研究動向・実務の進展を最新段階までフォロー・アップし、とくに伝統的な憲法・行政法学に対して及ぼす理論的影響について考察する。
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Causes of Carryover |
年度末の海外での学会参加・文献調査の予定がキャンセルとなったため。次年度に学外出張が解禁されたのちに、社会情勢を見極めて、学会参加・文献調査を実施したい。
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Research Products
(4 results)