2020 Fiscal Year Research-status Report
単純無申告逋脱罪の実務的運用を踏まえた逋脱罪一般の構成要件に関する研究
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19K01304
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
中尾 真和 金沢星稜大学, 経済学部, 准教授 (10781685)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 単純無申告逋脱罪 / 単純無申告罪との相違 / 実務上の運用の問題点 / 量刑 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で着目する論点の一つである、単純無申告罪と単純無申告逋脱罪との間における構成要件の重なり合いに関する問題点につき、コロナ禍の影響で資料収集(各地方検察庁における確定記録の閲覧等)を追加的に実施することが困難となったことから、研究1年目に収集した資料等を中心として整理・検討を行い、論文の形で公表した。概要は以下のとおり。 すなわち、単純無申告逋脱罪では単純無申告罪には存在しない「故意」に「税を免れたこと」という各構成要件が要求されており、一見、この点に単純無申告罪と識別して処罰する根拠を求めることができるようにも思われる。しかしながら、既存の解釈論(納期説)を参考にしつつ当該構成要件の分析を行うと、「納税義務があるにもかかわらず、単純無申告の状態の下、法定納期限を徒過すること」という行為態様を導き出すことができるところ、これは、ほとんどの租税において、単純無申告罪における「申告義務があるにもかかわらず単純無申告により法定申告期限を経過すること」という構成要件と主観面(故意)を含め実質的に一致するのである。この検討内容については、独自の調査(刑事確定記録の閲覧等)に基づく実務上の運用に係るデータにおいても、裏付けられることとなった。 そこで、単純無申告逋脱罪の処罰根拠について改めて考察するに、構成要件を加重する解釈によってそれを見出すことには難があるものの、税負担の公平性等の観点から、単純無申告や租税債権に関する不履行という単純無申告逋脱罪の要素を再評価することによって処罰根拠を見出すことができるとの結論に至った。ただし、単純無申告罪と単純無申告逋脱罪の規定が併存する状況は、実質的に構成要件が一致するものの法定刑が相当程度異なる処罰規定が存在することになり、国民の予測可能性等の観点から問題があるため、早急な対処が必要であることを付言する次第である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、学外における調査(各地方検察庁における確定記録の閲覧による資料収集等)に悪影響が生じたほか、コロナ禍への対応により業務が圧迫されたことなどから、今年度のスケジュールについては大幅な変更を強いられることとなった。この点、現状況下で実施可能な翌年度以降に予定していた研究の一部を前倒しして実施したものの、今後の予定については、別項記載のとおり、計画の変更が避けられないと考えている。このように、改めて段取りを組み直した上で、当初は予定していなかった調査等を行いつつ研究を進めざるを得ない状況をもって、研究全体としては、やや遅れていると評価せざるを得ないところである。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍により当初予定してた調査が実施できなくなった代わりとして、文献調査を中心としつつ、周辺領域(重加算税関連等)にまたがる研究へと計画変更を予定している。そして、当初予定した内容及び変更後の内容それぞれにつき、比較法的考察(海外の制度との比較)を加えた上、各研究成果を踏まえ、逋脱罪に関する解釈論につき、体系的な整理を行い、文書として公表できる形にする予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、学外における資料収集(各地方検察庁における確定記録の閲覧等)が実施できなくなったことから、旅費に係る支出がなくなり、全体として支出額が減少したため。 当該金額については、次年度における、資料入手、資料整理(OCR化)、海外資料の分析(翻訳補助)等の費用に充てる予定である。
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