2021 Fiscal Year Research-status Report
Legal Structure of Prohibition of the Use of Force in International Law
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19K01312
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 肇志 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 教授 (90292747)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 武力行使禁止原則 / 武力不行使原則 / 国際連合憲章 / 国連憲章 / 集団安全保障体制 / 自衛権 / 要請に基づく軍事援助 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の3年目である2021年度は、学説の検討および国家実行の分析を行った。視点は2019年度と同様であり、「本研究で明らかにしたい問い」との関係から、各論者・各国家が、武力行使禁止原則とその例外との関係をどのように理解しているかに着目した。すなわち、厳格な禁止と明確な例外として捉えているか、当該禁止は必ずしも厳格なものではない(一定の曖昧性がある)と捉えているか、あるいは新たな例外が認められうると理解しているか、といった点である。 またとくに国家実行との関係では、そうした理解と事実とをどのように結び付けているかにも注目して検討を行った。とくに2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵攻は、こうした問題意識を研ぎ澄ます一助となった。同侵攻については、それに先行するいくつかの事例(2008年ジョージア戦争、2014年クリミア併合)とともに検討し、国際政治学者を含む研究会で報告した。結果として、新鮮なフィードバックを得るとともに、今後の課題も明確になった。 その他、武力行使禁止原則の例外の1つと位置づけられる「要請に基づく軍事援助(Military Assistance on Request)」(かつては「要請に基づく干渉(Intervention by Invitation)」と呼ばれた)に関する国際プロジェクトのため、アジアの国家実行を調査し、報告書をまとめた。本研究との関係でも、具体的な実行の検討、とりわけその複雑さを明らかにしたことから得られるものは多かった。 また、武力行使禁止原則とその例外が国際司法裁判所で争われた代表的な事件であるニカラグア事件(1986年)について、判例評釈を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究3年目の2021年度は学説の整理および国家実行の検討を行う予定であり、いずれも進めることができた。国家実行に関連して判例評釈を公表することができ、今後の検討の視点を明確にすることができた。これらの作業を通じ、国際的なネットワークを広げることができたことも、今後本研究に活かされるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの学説の検討も継続しつつ、一次資料等の検討も一層進めたい。2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナ侵攻の衝撃を受け止めつつ、今年度はとくに冷戦終焉後の武力行使についての検討を行いたい。本年7月のシンポジウムでこれらの点について報告が予定されていることも、今後の研究を推進することにつながるであろう。
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Causes of Carryover |
必要な研究費の支出を行った結果、残額が発生することとなったが、少額のため、「次年度使用額」にすることとした。
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