2022 Fiscal Year Annual Research Report
国連海洋法条約の紛争解決手続における客観訴訟の可能性
Project/Area Number |
19K01313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
玉田 大 京都大学, 法学研究科, 教授 (60362563)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際海洋法 / 紛争解決 / 国際海洋法裁判所 / 管轄権 / 客観訴訟 / 調停 / 紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国連海洋法条約の紛争解決手続における「客観訴訟」の可能性について、主に関連する国際判例の分析を行った。また、関連して、紛争解決手続における紛争解決手続の全体像についての分析も行った。研究成果は以下の通りである。 第1に、国際裁判における客観訴訟の新展開につき、ジェノサイド条約適用事件(ガンビア対ミャンマー)の先決的抗弁判決(2022年)を分析し、判例評釈を執筆した。本論文で指摘したように、従来の客観訴訟に加えて、紛争発生要件が緩和されていることから、ICJ争訟手続が国際コントロールとして機能していることを指摘した。 第2に、本研究のタイトルに合致した論稿を発表した(「国連海洋法条約の紛争解決手続における客観訴訟の可能性」)。近年のICJ判例を分析した上で、客観訴訟の要件を明らかにし、国連海洋法条約紛争解決手続において客観訴訟が容認される可能性が高いことを指摘した(特に、国際海洋法裁判所の判例がICJ判例に影響を与えていることを指摘した)。同時に、客観訴訟が認められる場合の問題点も指摘することができた。 第3に、東チモールとオーストラリアの間の海洋境界画定に関する強制調停手続について分析を行い、EJIL誌に論文を掲載することができた。強制調停手続自体は客観訴訟との関連性は低いものの、国連海洋法条約上の紛争解決手続における重要性は否定できない。 第4に、国際裁判に於ける「紛争」概念について分析を進めた。特に、国連海洋法条約上、「沿岸国訴訟」が多用される傾向が見られる。この中で、一定の条件下で、領有権紛争(領土主権紛争)の存在が強制的に認定されていることを指摘した。この点は、日本の周辺で生じている「紛争」(竹島や尖閣諸島)との関係で重要なインプリケーションを有する。
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