2023 Fiscal Year Annual Research Report
Declaratory Judgment in International Adjudication
Project/Area Number |
19K01314
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩本 禎之 (李禎之) 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (20405567)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国際司法裁判所 / 宣言判決 / 司法的救済 / 判決不履行 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度(最終年度を1年延長)は2022年度に積み残していた課題に取り組んだ。すなわち、被告国の履行裁量を含む「当事国たる被告国の意思」と判決履行との関係について判決外在的な要因を含めて調査・分析を行った。そして、研究成果として、被告国による判決不履行に関する研究報告を2023年度国際法学会研究大会にて実施することができた。 同研究報告では、国際裁判所判決の受入れを国家が明示的に拒否して判決内容に沿う行動をとっていないという事例を取り上げ、仲裁裁判2件(南シナ海仲裁、クロアチア・スロベニア仲裁)およびICJ3件(領域及び海洋紛争事件(ニカラグア対コロンビア)、主権免除事件(ドイツ対イタリア)、インド洋海洋境界画定事件(ソマリア対ケニア))の2010年代以降の5件を対象とした。そして、国際裁判所の管轄権を基礎づける判決前の「同意」は判決履行に対する国家意思たる「同意」と必ずしも一致しないことを理論的に明らかにしたうえで、判決履行意思に影響を与えたかもしれない判決外在的な要因を抽出した。具体的には、紛争主題の性格、当事国の国内的状況(国内法制度および国内政治)および法廷に対する信頼、という3点である。この分析によって、被告国による判決拒否の背後に介在している政治的考慮を指摘すると同時に、近年の判決拒否の実行が、個別利益の確保を重視する国家の現実だけではなく、国際裁判制度の信頼性や国際法のあり方に対しても影響を与えようとしていることをも示しているとの評価を行った。なお、上記報告に基づく論文は国際法外交雑誌に掲載の予定である。 事業期間全体を通じた研究により、宣言判決の懲罰性や履行裁量を明らかにできた。こうした宣言判決の性質が訴訟や紛争解決でどのような役割を果たしたのかを特に豪州を例として実証する国際共同研究加速基金(A)による研究によって補完・補強する予定である。
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