2020 Fiscal Year Research-status Report
Problems of Private International Law for Protection of Legal Interests in Information Society: New Approach from the Perspective of East Asia
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19K01316
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
種村 佑介 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (80632851)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際私法 / 国際知的財産法 / 国際不法行為法 / 法益の所在 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第四次産業革命等の急速な変化により、情報社会において新たに保護すべき価値を生じるに至った種々の「法益」(権利よりも広い概念を想定している)の保護に関し、日本のみならず、韓国や中国といった東アジア諸国からみても妥当する、財産法分野の国際私法ルールの定立を目指すことにある。 2020年度は、国際知的財産法の理論研究に重きを置く姿勢を継続して諸文献を精査し、関連する学会に参加したほか、関連する問題につき、渉外判例研究会において報告を行った(種村佑介「米国および日本で継続した不貞行為の結果発生地を日本とした事例」渉外判例研究会〔オンライン、2020年8月22日〕)。また自身が世話人となり、韓国の研究者も交えた研究会を定期的に開催したほか(早稲田大学比較法研究所共同研究会〔オンライン、2020年10月28日、11月11日、12月9日〕)、これとは別に、韓国・中国の研究者らとはオンライン上で最終年度に向けた企画の打ち合わせを行った。そして、これらの研究活動により得られた知見を反映させつつ進めた国際私法理論研究の成果として、前年度に開催した国際シンポジウムの講演記録を公表した(「〔講演〕日韓共同研究シンポジウム『第四次産業革命への法制度的対応』」比較法学54巻1号159-216頁)ほか、本課題に関連する判例評釈(種村佑介「渉外判例研究(Number 688)米国および日本で継続した不貞行為の結果発生地を日本とした事例[東京高裁令和元.9.25判決]」ジュリスト1552号128-131頁)も公表した。また、2021年度中の公表を目指して、国際知的財産法分野の研究論文の執筆に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、新型コロナウィルス感染症の影響拡大による自身や海外共同研究者の研究活動の大幅な制限を受けて、当初の研究計画の第一の柱(東アジア情報保護法制の比較研究)で予定していた韓国訪問や実地調査の中止を余儀なくされた。このため、このセクションは当初期待していたような研究成果につながらず、進捗状況としてはやや遅れていると評価せざるを得ない。 他方、研究計画の第二の柱(国際私法理論研究)については、前年度からの研究成果を整理する期間を想定していたより長めにとることができ、知的財産分野の国際条約についての知見をより一層深めることができた。また、国際法協会第79回世界大会(オンライン、2020年11月29日~12月13日)に参加し、国際知的財産法分野の新たな動向に関する知見を得たことも、研究をより深化させるヒントになったと肯定的にとらえている。 なお、韓国次世代コンテンツ財産学会や中国の研究者との研究交流については、上記の事情で一度は途切れそうになったものの、オンライン上で交流を続けた結果、2021年度に早稲田大学で国際シンポジウムを開催する方向(オンラインとの併用を予定)で意見が一致し、現在準備を進めている。 以上の研究活動を通じて、比較研究・実地調査の面では当初予定していた通りの進捗状況にはないものの、理論研究の面ではそれを上回る知見を獲得できたほか、オンラインを通じた新しい形での研究推進に関しても、2021年度に向けて一応の目途をつけることができた。その他、研究成果の公表も概ね当初の予定通りであり、これらのことから、本研究課題は本年度の遅れを2021年度には十分取り戻すことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においては、計画最終年度の研究成果公表の一環として、早稲田大学に韓国、中国から研究者や実務家を招いての国際シンポジウムを開催することを目指している。現時点で中国法の整備状況は韓国や日本に比べて遅いけれども、東アジア最大規模の市場をもつ中国を検討の対象に含めることは、実務上の重要性をもつ。本シンポジウムでは、過年度の研究成果の発表のほか、参加者全員での討論を行い、東アジアに合った情報社会の「法益」保護の在り方を探りたいと考えている。しかし、昨今の新型コロナウィルス感染症の影響拡大により、現時点で海外の共同研究者・実務家の来日が可能であるかの見通しは立っていない。これについては、対面開催と並行してオンライン開催の可能性も視野に入れつつ、そのための環境整備も含めて早めに準備を整えたい。 また個人としても、2021年度は上記の国際シンポジウムに向けて前年度の国際私法理論研究で得た知見を整理し、成果を国内の研究会報告や論説の形で積極的に公表したいと考えている。
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