2022 Fiscal Year Annual Research Report
国際法における多元主義の理論とその展開―国連安保理の制裁と人権規範の相克―
Project/Area Number |
19K01322
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
加藤 陽 近畿大学, 法学部, 准教授 (90584045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 国際法 / 国連憲章 / EU法 / 国際人権法 / 立憲主義 / 多元主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷戦の終了により、国連、EUなど国際条約に基づく法秩序が活性化したが、それらの間で抵触・衝突が発生するようになった。本研究は、国連法(安保理による制裁)と人権法との抵触を素材としつつ、こうした状況に対処するための諸理論を検討した。 2019年度においては、理論的枠組みを検討した。とりわけ、Fassbender (2009)、Peters (2017)らの立憲主義論、Berman (2012)、Krisch (2011)らの多元主義論を分析した。諸理論には様々な主張があるが、全体として3つの立場に大別した。 2020年度では、理論的検討をふまえた上で、関連する実践の展開を考察した。具体的には、欧州人権裁判所のBehrami事件、Al-Jedda事件など国際判例に加え、カナダ連邦裁判所Abdelrazik事件、英国最高裁のSerdar Mohammed事件など国内判例も考察の射程に含めた。 2021年度においては、2019年度の理論的検討と2020年度の実証的検討を統合した。すなわち、法的階層性を設定し、全体の統合を主張する国際憲法論、諸法秩序の自律性を容認しつつも立憲的規範に基づき統合を志向する立憲的多元主義、さらには、立憲主義的要素をしりぞけ、秩序の多元性を強調する強度の多元主義があり、本研究は諸判例と安保理の手続改革の実践を分析し、最後の立場、とりわけラディカル多元主義の意義を示した。 最終年度では、本研究の主要部分をまとめた内容を単著『多元主義の国際法―国連法と人権法の交錯』(信山社)として公刊することができた。さらに、本研究の多元主義理論をさらに発展させるため、立憲主義と多元主義の理論的異同をあらためて精査したところ、両者には手続的側面を重視するという共通点が明らかになった。こうした部分に改鋳をくわえ、多元主義独自の規範的枠組みを探っていくことが重要である。
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