2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K01337
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| Research Institution | Sophia University |
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Principal Investigator |
富永 晃一 上智大学, 法学部, 教授 (30436498)
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| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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| Keywords | セクシュアル・ハラスメント / セクハラ / 性差別禁止 / パワーハラスメント / パワハラ / プライバシー / いじめ / 性的いやがらせ |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本年は、日本法とアメリカ法のセクシュアル・ハラスメント（以下「SH」）に関する文献等の収集・裁判例の整理等を進めた。並行して、研究会においてSH規制についての私見を報告し、雇用機会均等法上のSH規制上の「意に反する」「不快な(言動)」「職場環境の悪化」等について検討した（SHの対価型、環境型の２類型のうち環境型を中心に検討）。また研究成果に基づき、後記のコンメンタールの担当執筆部分を執筆した。
アメリカ法上のSH（公民権法第七編上の「性差別」の一類型）には、Ａ「意に反する（望まれない、”unwelcomed”）」とＢ「過酷又は広汎な職場環境の悪化」という要件が存するところ、Ａは主観的に判断されるが、Ｂもまた主観・客観の両側面から判断され、かつこれらは「要件」とされる（ＡとＢの主観面は別である。主観的に意に反し、かつ客観的に過酷又は広汎な職場環境の悪化があっても、本人が過酷又は広汎な職場環境の悪化と捉えない場合がある）。また職場環境の悪化については「合理的な個人（"reasonable person”）」の観点で判断される（その内容として「合理的な女性」("reasonable women”)とすべきとの見解も有力）。これに対し日本法では「意に反する」と「不快な(言動)」「職場環境の悪化」とは総合判断とされ、主観的要素が重視される（客観的に不快な言動・職場環境の悪化とまでいえないものでも、本人が意に反することを示せばその後継続しての同様の言動がＳＨとされうる）。アメリカ法ではそもそも「性的な言動」という要件はなく、性差別に基づく言動一般が規制対象であるが、日本の均等法上のＳＨは「性的な言動」に限定される一方、性差別的でない性的な言動も規制される危険性がある。すなわち、日本法のＳＨ規制は性差別禁止規制というより性的な言動に敏感な者を保護する規定という性格が強いものとなっている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本法とアメリカ法のＳＨ規制の性格の相違について、相当の資料が得られたため。アメリカ法上はセクシュアル・ハラスメント（以下「ＳＨ」）は直接的な差別と位置付けられているが、不特定者に対する環境型ハラスメントについては間接的な差別とも位置付け得るとの指摘が複数の論文でなされている。日本の雇用機会均等法上のＳＨは、性差別に基づく言動を規制せず、性的な言動を規制するのみであるが、これはいわば直接的な性差別を禁止せず、間接差別にいう一見中立的な基準としての性的な言動を規制しているとみることが可能である（いわゆる対価型は直接差別と位置付けることが自然かと思われるが、不特定者に対する性的な言動は、通常、被害者の性別を理由としてなされたものではなく、また男女双方の職場環境をもたらしうるが、一方の性別（女性又は男性）に偏って影響が生じるという類型だと捉えることが可能と思われる）。以上のような日本の雇用機会均等法上のＳＨ規制の性格について、アメリカ法との比較によりかなりの程度新規性のある知見を得られたと考えるため。
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| Strategy for Future Research Activity |
いわゆる新型コロナウィルス関連疾患への対策のため、特に海外法については、電子媒体でない研究資料は収集困難な状況にある（またその影響かどうか不明であるが、海外の法律書の出版元のサイトも閉鎖中(準備中）のものが存する(Bloomberg Law)）。そのため、電子媒体での資料収集を中心として行い、並行して可能な限りで紙媒体での文献も収集を継続する。オンラインでの研究会等にも可能な限り参加して研究成果の報告等を行う。また、日本法のＳＨ規制について得られた知見については、紀要や法律雑誌への投稿を目標に準備を進めることとしたい。
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Research Products
(1 results)
