2023 Fiscal Year Annual Research Report
「協議・合意制度」および「刑事免責制度」に関する訴追裁量のコントロール
Project/Area Number |
19K01341
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
黒川 亨子 宇都宮大学, 共同教育学部, 准教授 (40590534)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 訴追裁量 / 協議・合意制度 / 司法取引 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国と同様、合衆国の検察官は、広範な訴追裁量を有する。起訴しない権限には、事実上無制限の裁量がある。起訴する権限には、限定的ながら憲法上の制限がある。①被告人が罪を犯したことにつき相当な理由がある場合であっても、人種的偏見や政治的迫害などを理由とした選択的起訴は許されない。また、②法的に認められた権利(有罪判決を不服として控訴する、陪審裁判を要求する等)を行使した被告人を、追加的により大きな罪で起訴する等の報復的起訴は許されない。 これまでの研究において、合衆国における訴追裁量の行使に関する内部規制のためのガイドラインはあるものの、実際には効果的に機能しておらず、検察官の不当な恣意的決定や取引は、秘密裏に行われるために、弁護人が発見するのは困難であり、また発見できた稀なケースにおいても、法的な救済を求める立証のハードルが非常に高いことから、弁護人が、異議を申し立てることは非現実的である、ないし有罪答弁により異議申立ての機会がそもそも存在しないという実態が明らかになった。このような現状から、合衆国では、公正公平な起訴を確保するための取組みや、学説による改革提案が、活発になされている。 2023年度は、進歩的な検察官(Progressive Prosecutors)、すなわち、一定の軽微犯罪は起訴しないと公言し、刑事司法制度が有色人種に及ぼす不釣り合いな影響を是正する措置を講ずることを公約に掲げて選出された検察官が、選択的起訴の分野に与えうる影響について検討した。連邦最高裁が、誰が起訴され、誰が不起訴となったのかに関する証拠開示を認めるために、被告人に多大な立証責任を課したことにより、選択的起訴の主張は、実質的に不可能となっている。しかし、不起訴方針が明らかであれば、被告人はこの負担から解消され、選択的起訴の主張に成功する可能性がある。
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