2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K01344
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
嶋矢 貴之 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80359869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 正当防衛 / 社会的相当性 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会内での実力行使の限界につき、以下の2つの側面で研究を行い、業績を公表した。 1つ目は、有形力行使や加害告知の限界に関し、性犯罪について、過去に公表していた業績②③を、微修正の上、書籍に掲載した。そこでは、性行為をめぐる実力行使について、どこからが性犯罪となりうるかについて、明治期から昭和戦前期にかけての立法・判例・解釈論を検討し、強制わいせつ罪を重い罪と評価していく立法姿勢、被害者の抵抗は問題視しない学説の姿勢、暴行・脅迫にあたらない事案でも(旧)準強姦や準強制わいせつで処罰を新たに試みる判例の姿勢などを明らかにした。また、書籍化に対応して、以上の概要を示した解題を書下ろし(業績①)、現在進行している、性犯罪の見直し議論に対する貢献を意図した。 2つ目は、財産犯に関し、業績④⑤を、事例演習の形式で連載執筆を行う過程で取り上げた。2項犯罪については、「財産上の利益」が財産犯となりうる場合を、その得た利益を事案に応じて確定した上で、その程度を処罰価値の観点から確認する必要があることを確認した。強盗罪のほか、詐欺罪、恐喝罪にも妥当しうる議論であると思われる。また、欺罔による財産加害の処罰の限界について、近時の最高裁判例を踏まえつつ、どのような構成で、何を考慮して成否を検討するべきかという点の可能性の検討を行った。判例・学説の一致を見ない問題であるが、処罰限界設定の着目点の相違について、指摘をできたものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の概要記載のとおり、有形力の行使や加害告知につき社会内での行使の限界、財産犯の成立限界について、公表業績を掲載することができた。さらに最終年度にむけて、刑法における暴行や脅迫の成立限界に関する新たな業績の公表を予定している(脱稿済み・公刊予定)ほか、関連業績の学会発表や書籍の分担執筆の準備を進めており、おおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、社会内での実力行使の限界についての刑法的観点からの検討を行っていく。予定している研究としては、①暴行・脅迫という刑法上の各犯罪の要件につき、その犯罪ごとの関係を検討するとともに、それぞれの意義、社会生活上の観点からの成立限界について検討する雑誌論文を掲載する。②刑法学会において、死体の取扱いをめぐり、葬送という社会慣習と、それに対応した社会内での取り扱いの問題について、議論の歴史的経緯の検討を行い、法益や処罰限界の具体化に関する発表を行う。③財産犯について、引き続き、正当な実力行使の限界に関する検討を含んだ注釈書の執筆を行うなどの研究・業績発表を予定しており、最終年度に向けて取りまとめを行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス流行により、出張等が困難となり、旅費の利用を行わなかったため。
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Research Products
(5 results)