2019 Fiscal Year Research-status Report
刑事訴訟における「事実・証拠の量」と訴因・争点設定の相関関係に関する理論的考察
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19K01345
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宇藤 崇 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30252943)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 刑事手続法 / 刑事事実認定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,刑事訴訟における事実認定に必要となる「事実・証拠の量」を,訴因・争点の設定の仕方という訴訟当事者の活動との相関関係のうちに分析し,あるべき運用の理論的枠組みを構築することにある。その方法として,国内外の文献を研究するとともに,わが国の裁判例の分析や,刑事裁判に携わる法律実務家の相場観を探る。初年度である本年度は,事実の量,証拠の量のそれぞれについて,これまで行ってきた準備的な研究を整理した。 まず,事実の量については,交通事犯における刑事過失の択一的認定の裁判例を素材として,検察官が訴因設定時に必要と想定する事実の量(または密度)と,裁判所が事実認定に必要としたものとを対比するという観点から研究をすすめた。その結果として,択一的認定が問題となる事例にあって,検察官が想定する事実の量と裁判所の想定するそれとが異なることに起因するものがあり,本来訴因設定の適切さの問題として論じられるべきもののあることをあらためて確認し,検討の成果を論文として発表した。 また,証拠の量については,個々の刑事手続におけて形成される争点に左右されうるところ,今期は,これからの研究の前提となる争点整理そのものに関わるこれまでの議論と課題を,わが国における公判前整理手続制度,とりわけ当該制度中の証拠開示との理論的・政策的な関わりで論じた。さらに,当事者間の立証責任の分配・転換についても,近時の下級審裁判例を紹介し,論点を整理した。本研究は,広く事実認定に至る立証過程にも関わるものと捉えることができることから,これも関連する成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は,刑事事実認定に必要とされる事実・証拠の量を探り,刑事裁判に関わる法律実務家の相場観の現実とその適切さの有無を明らかにすることにある。本年度は,その足がかりを確かなものとすることが目標であった。その点で,先に示した本年度の研究実績は十分なものである。また,研究環境の整備という観点からも,研究の材料となる国内外の文献の収集は順調に進んでおり,裁判官を中心に法律実務家との本研究に必要となる意見交換ができる環境も十分に整えている。以上のことを踏まえ,本研究の進展はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究実績を基礎として,今後は,本研究の直接的な課題である,事実認定における必要な事実量,証拠量に関わる分析を進めることとする。研究を進める上での推進方策は当初想定のものであり,見直しは現時点で必要ない。
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Research Products
(3 results)