2021 Fiscal Year Annual Research Report
企業の証拠収集行為は,如何なる場合に,捜査機関の行為と評価されるか。
Project/Area Number |
19K01346
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
原田 和往 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (20409725)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 私人による証拠収集 / 内部調査 / 協議・合意制度 / 国家行為 / ステイト・アクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,協議・合意制度の利用を目的として,捜査と並行して実施される社内調査を適正に規律することを目的として,比較法的知見を踏まえ,私人の証拠収集行為を捜査機関の行為と評価する際の判断枠組みの提示を試みるものである。 最終年度である本年度は,研究計画のうち,③捜査機関の依頼や命令が存在しないとしても,企業の内部調査担当者による証拠収集行為が,捜査機関の行為と評価されるのは,如何なる事情が存在する場合かについて,得られた比較法的知見を整理した。また,前年度に実施したUnited States v. Connolly (S.D. N.Y. 2019)の分析結果をもとに,関連する事案と判例法理の分析を行ない,企業の内部調査が捜査機関の行為と評価された場合に,刑事訴訟法等においてどのような制約が生じるかという点について考察した。その結果,協議・合意制度を利用しようとする企業が,捜査・訴追機関から相当の支援等を受け,そうした国家機関の行為と評価されるような態様で内部調査を実施し,当局及び企業による捜査・調査に非協力的な従業員に対し,解雇等の重大な経済的不利益を与えると脅迫し得た供述は,憲法・刑事訴訟法との関係で,証拠として許容し得ない場合があることを明らかにした。 その上で,企業の内部調査担当者による証拠収集行為について,如何なる事情が存在する場合に,捜査・訴追機関の行為と評価されるかについて,具体的な判断枠組みの構築を試みた。そして,これまでの研究成果を踏まえ,捜査・訴追機関の依頼や命令が存在しない状況において,正当な内部調査を奨励しつつ,国家機関の行為に課される諸々の制約を潜脱するような不当な内部調査を規制するためには,捜査・訴追機関からの働きかけがなくても,内部調査担当者が問題となっている証拠収集行為を行なったかどうか,という視点が有用であるとの結論を得ることができた。
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