2019 Fiscal Year Research-status Report
ヘイトスピーチ・フェイクニュースに関する多元的法規制について
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19K01347
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
櫻庭 総 山口大学, 経済学部, 准教授 (80546193)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘイトスピーチ / 集団侮辱 / 名誉毀損罪 |
Outline of Annual Research Achievements |
名誉毀損罪・侮辱罪で可罰的な狭義のヘイトスピーチの範囲を明らかにするため、以下の検討を行った。まず、ドイツ刑法の集団侮辱に関して、学説としては、Androulakis、WehingerおよびFoestnerの見解を中心に検討し、判例については、とりわけ近年のa.c.a.b.表現に関する連邦憲法裁による一連の判例を中心に検討した。その結果、集団侮辱の処罰範囲について従来の判例は必ずしも一貫した基準を適用してきたとはいいがたく、学説も概して批判的であることがうかがえ、そのような状況に鑑みて、近時の連邦憲法裁判所では、集団侮辱の成立範囲について単に概観可能な部分集団を構成するだけでは足りないとの立場を顕示するようになっていることが明らかとなった。 また、わが国の憲法学におけるヘイトスピーチ限定的規制説と刑法学説との整合性についても検討を行った。その結果、憲法学説では可罰性の根拠として公然性よりも面前性要件が重視されており、名誉毀損罪というよりも粗暴犯型の犯罪類型が想定されていることが推察されるが、名誉毀損罪・侮辱罪における特定性要件の解釈問題ととらえ直すことで刑法の通説・判例の立場と整合的に解釈できることを明らかにした。 集住地区での表現については、例えば、「あからさまに」集住地区の在日コリアン個々人に向けたといえる行為態様でのヘイトスピーチであれば、これに集団侮辱を適用する余地があること。そして、集住地区以外でも、不特定多数人の聴衆がいる中で、特定個人に向けられていると推知できる場合は、特定人に向けた表現と解することができること。以上を明らかにすることができた。ただし、その具体的適用については、ヘイトスピーチの実態に即して検討する必要があり、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画で示した本年度の研究計画・目的を実現することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究実施計画通り、インターネット上のヘイトスピーチに関する検討に移行する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、延期となった研究会で使用する予定であった旅費があまり、また、年度末で代替の予算使用を検討することもできなかったため。 延期された研究会の開催時期はなお不明であるが、もし開催される場合は、その旅費に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)