2020 Fiscal Year Research-status Report
ヘイトスピーチ・フェイクニュースに関する多元的法規制について
Project/Area Number |
19K01347
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
櫻庭 総 山口大学, 経済学部, 准教授 (80546193)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ヘイトスピーチ / 名誉毀損 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の課題であった集団侮辱の解釈を通じた可罰的なヘイトスピーチ類型の検討については、近年のドイツ連邦憲法裁判例の考察を加えた新たな論文を執筆した。ただし、共著論文集の一編として公刊予定であるが、コロナ禍の影響で出版が遅れている。 今年度の課題である広義のヘイトスピーチとその規制に関する検討については、ヘイトスピーチ規制論における「人間の尊厳」概念の内実を整除することからアプローチを試みた。すなわち、「人間の尊厳」概念のもとで主張されるヘイトスピーチ規制の保護法益の内容は、論者によってばらつきがあり、統一的概念のもとで検討することは混乱を招くように思われる。したがって、その保護法益としての特徴を「平等に取り扱われる社会的地位の承認状態」と整理し、さらに、個人的法益としての「平穏生活権」、社会的法益としての「平穏生活環境」に展開することで、それらの保護に相応しい、民事的、刑事的および行政的規制がありうることを明らかにした。また、保護法益の検討を通じてインターネット上のヘイトスピーチの性質とそれに相応しい規制方法についても検討を加えた。以上の成果については、大学紀要に掲載予定であり、すでに原稿は提出済みである。 加えて、ヘイトスピーチ規制における刑事法の意義と限界を明らかにすることから、多元的法規制という視点の必要性を主張する本研究の基本コンセプトについて、英文で執筆した論文も今年度にケンブリッジ大学出版局からHate Speech in Japanというタイトルの共著本の一編として公刊することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による渡航制限のため、ドイツのネットワーク貫徹法の実務やカナダの人権委員会・人権審判所の実務に関するインタビュー調査は実現できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度はドイツのネットワーク貫徹法の検討を通じて、インターネット上のヘイトスピーチに関して、その性質と適切な規制手段について検討を深める。 また、政治的言論との区別に関しては、名誉毀損罪における公益目的に関する裁判例が注目されるため、それに関する判例研究を出発点として検討を深める。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により予定していた出張が不可能になったため。 次年度の使用計画としては、依然として新型コロナウイルスの感染状況が収束の兆しを見せず、次年度も引き続きオンラインでの研究会や会議が多くなることが予想されるため、それに対応するためのノートパソコンなどオンライン機器の購入に充てたい。
|
Research Products
(2 results)
-
-
[Book] Hate Speech in Japan2021
Author(s)
Shinji Higaki, Yuji Nasu, Osamu Sakuraba, Asushi Kondo, Shigenori Matsui, Ayako Hatano, Takanori Yamamoto, Ryangok Ku, Masayoshi Kaneko, Kensuke Kajiwara, Katsuo Yakura, Il-song Nakamura, Shiki Tomimasu, Toru Mori, Keigo Obayashi, Naoto Higuchi, Fumiaki Taka, Kazuo Ogura, Shinji Uozumi
Total Pages
506
Publisher
Cambridge university press
ISBN
9781108483995