2019 Fiscal Year Research-status Report
捜査手続の密行化と任意捜査のコントロールに関する検討
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19K01348
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
内藤 大海 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (00451394)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 密行的処分 / 欺罔 / 同期の錯誤 / なりすまし捜査 / おとり捜査 |
Outline of Annual Research Achievements |
最大判平成29年3月15日のいわゆるGPS判決に依拠し、捜査の規律に関する判例(最決昭和51年3月16日)の枠組みが、重要利益侵害説を前提とした理解をとったことを明らかにした。その上で、GPS判決と前後して登場した、2件の下級審判例(鹿児島地加治木支判平成28年3月24日、東京高判平成28年8月23日)を中心に、これらの判例も、重要利益侵害説に立ちつつ、①欺罔的捜査において動機の錯誤は同意の有効性を否定する要素となるべきこと、②密行的手段は濫用ないし事後的隠蔽等の危険が高くその評価にあたってはとくに慎重であるべきことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
並行して実施していた国際共同研究加速基金の課題研究の最終年度にあたり、エフォートを十分には避けなかった。ただし、国際共同研究と本研究の問題関心には一定程度共通性があるため、思考の大幅な切替は要さず、その意味では従前の研究をベースに本研究にもスムーズに入れたのではないかと分析する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のテーマは、密行的な任意捜査の規制であるが、密行的であるがゆえに強制処分としての規律がふさわしい場合もありうるのではないか、というのが現段階で得られた知見である。この結果自体には満足しているが、強制には至らないものの(つまり、任意捜査ではあるが)、一定程度の利益侵害があり、必要性・緊急性との相当性判断において違法となる類型もある。これまで、任意捜査として違法となる類型にはあまり目立ったものはなかったが、なりすまし捜査に関する前記鹿児島地裁加治木支部判決が違法判断をし、さらに証拠排除を認めるに至っている。期間中に公表した拙稿「捜査における欺罔・不告知と捜査の密行性」ではこの判例も取り扱ったが、基本的にはそこで明らかにしたことをベースに、当初の予定通りに研究を進める。
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Causes of Carryover |
2020年3月に退職した先輩同僚から関係書籍を引き継ぐことになり、研究室が手狭になったため、書籍の購入計画をあたらめて練り直し、やや買い控えてしまったため主に書籍代について余剰が生じた。書籍置き場については別室にスペースを確保することができたので、この分についてはある程度解消する目処が付いた。ただし、本研究は比較法研究をベースとするため、ドイツ渡航を中心とする旅費支出として計上した金額が少なくないが、海外渡航の先行きが見えず、また国内の研究会がオンライン等の代替的措置で実施されているため、昨年度以上に次年度使用額が生じる危険性がある。
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