2023 Fiscal Year Annual Research Report
捜査手続の密行化と任意捜査のコントロールに関する検討
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19K01348
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
内藤 大海 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 教授 (00451394)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 捜査の密行性 / 法律の留保 / 連絡員 / ドイツ刑訴法改正 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの調査結果を踏まえ、当該年度においては、なぜドイツ判例・立法者は連絡員の投入が一般規定による授権でカバーされると考えるのかという点の調査に当たった。この調査により、裁判所および議会の考える強制処分の意義を探る手がかりがあると考えたためである。 まず文献調査を実施したが、これに関する記述はほぼ得られなかった。そこでドイツに赴いてインタビュー調査を実施した。まず、連絡員の活動は潜入捜査官のそれと比べて権利制約が低いと考えられている反面、学説の多くは両者に実質的な差異はないと考えていることを確認した。次に、なぜ判例や立法者がそのような理解をしているのかについて、公務員とは違い連絡員の場合は多様な類型が考慮されうるため一律に強制処分とすることは必ずしも妥当でないこと、また捜査官(公務員)ではないため有罪証拠を収集しようという傾向が一般的に弱いこと、架空身分を用いるとは限らないことなどが、権利制約が比較的弱いとみられる根拠として考えられているのではないかという分析を受けた。しかし、いずれの根拠も説得的ではない。事実、立法者も連絡員の投入が一般規定ではカバーされないことを認め立法の手続きに入った。この状況を受け、現在は刑訴法改正法案の検討を進めている。 文献およびインタビュー調査から、ドイツにおける強制処分の個別的取扱いの背景には法律の留保原則の存在がある。このことはわが国の強制処分についても妥当するものである。ただし、上で示したように、刑事訴追分野における法律の留保原則の徹底が図られているように思われるドイツにおいても、一般的な行政処分に比べると課題があることが明らかになった。連絡員をめぐる議論は、わが国における任意処分の多くも個別規定による授権を要するものであるという本研究の仮説を裏付ける一助になるものと考え目下取りまとめ作業に従事している。
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