2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on the Generation of South-North Integrated Global Green Criminology and the Foundation of International Environmental Court
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19K01353
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
竹村 典良 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (60257425)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナイル川流域 / 水資源紛争 / グランド・エチオピア・ルネサンス・ダム / 水資源ヘゲモニー / コバルト採掘 / 暴力的収奪 / 環境破壊 / 違法取引 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、第一に、ナイル川流域における水資源をめぐる紛争と協力、第二に、コンゴ民主共和国におけるコバルト採掘・取引における人権侵害・環境破壊・違法取引、の2つの調査研究を行った。 第一に、「ナイル川流域国間における水資源をめぐる紛争と協力、および、エチオピアにおけるグランド・エチオピア・ルネサンス・ダム(GERD)の建設と水資源ヘゲモニーの変化」について調査研究を行った。ナイル川流域は水資源の慢性的な不足が重大な問題となり、気候変動がこれに拍車をかけている。過去十年における流域国の協力関係の構築の試みは失敗に終わり、再び水資源をめぐる紛争が激化しつつある。エチオピアが単独でGERD建設プロジェクトを進めた結果、下流のエジプトと上流のエチオピアとの政治的緊張が高まった。エジプトは過去に締結した条約の順守を、エチオピアは新しい地域関係を構築しようとしている。この問題を解決するためには、流域諸国が自国優先の利益ではなく水資源の共有を目指す持続可能な協力を発展させることが必要である。 第二に、「コンゴ民主共和国におけるコバルト採掘をめぐるカオス状況、および、人権侵害・環境破壊・グローバルな違法取引による三幅対の奈落状況」について調査研究を行った。コンゴ民主共和国と国内・国外企業連合は、コバルト採掘において重大かつ構造的な人権侵害と環境破壊を惹起している。過去20年以上にわたって、紛争が繰り返され、天然資源の組織的な搾取が続いている。人々は採掘の奴隷的労働に従事することを余儀なくされ、武力集団は採掘から最大限の利益を得、反政府組織と軍隊は採掘場の統制を巡って争っている。コバルトの採掘と取引において、汚職と暴力が「暴力的強奪システム」に制度化されている。各国政府は、倫理にかない、人権侵害や環境破壊と無関係な生産・取引を行うように、各国企業に責任のある行動を求めなければならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の三本柱、第一に、南側途上国および北側先進国に現象する環境・エコ犯罪の形態・パターンを明らかにし、第二に、北側先進国グリーン犯罪学の理論的解釈レンズを矯正し、南側途上国で発生し、日常生活に影響する犯罪、暴力、正義の多様なパターンを説明し、植民地主義に根差す諸問題を克服し、南北統合グローバル・グリーン犯罪学を生成・発展させ、第三に、天然資源等をめぐる多国間の紛争を解決する「国際環境裁判所」の創設のための諸条件を解明する、を着実に進めている。 また、これらの計画を実施するための5つのプロジェクトのうち、3つに関連するプロジェクトを実行に移している。すなわち、第三プロジェクト、アフリカ諸国における気候変動、地球温暖化に伴う自然環境と人間と動物の生活環境の悪化・破壊について、気候変動による旱魃や洪水によって、生態系の破壊、農業生産の低下、食糧危機、移民・難民の増加、土地・生活基盤の争奪、暴力行為の多発など、複雑な因果関係を有する多様な現象が生じている現状を解明し、グローバルな危機状況への対応方法を探求した。第四プロジェクト、「国連の持続可能な開発目標」(UN-SDGs)について、南側途上国の多数の地域において犯罪と暴力のリスクが高まっている中で、犯罪を統制し、安全で正義にかなった社会を創り出すために、また、環境犯罪、生態系の破壊を阻止し、環境的正義を実現するために、南北統合グローバル・グリーン犯罪学がどのようにアプローチすべきか検討した。第五プロジェクト、複数国を貫流する河川(ナイル川、メコン川など)における水争奪に関する紛争などの実態を解明し、経済発展と環境保護をめぐる紛争を調整し解決するための国際機関として「国際環境裁判所」(International Environmental Court)の創設を提案し、その概要および前提条件について考察した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、第一に、南側途上国および北側先進国に現象する環境・エコ犯罪の形態・パターンを明らかにし、第二に、北側先進国グリーン犯罪学の理論的解釈レンズを矯正し、南側途上国で発生し、日常に影響する犯罪、暴力、正義の多様なパターンを説明し、植民地主義に根差す諸問題を克服し、南北統合グローバル・グリーン犯罪学を生成・発展させ、第三に、天然資源等をめぐる多国間の紛争を解決する「国際環境裁判所」の創設のための諸条件を解明する。 これらの計画を実施するために、5つのプロジェクトを展開する。 第一に、南太平洋島嶼における海洋汚染、生物多様性の減退、天然資源採掘と輸出、海面上昇と土地喪失、植民地化と生活環境の破壊などの現状を解明し、対処方法について考察する。第二に、ラテンアメリカ諸国における北側先進国多国籍企業による天然資源採掘と環境破壊について、生態系、人間の健康に悪影響が生じている現状、および、多国籍ビジネスによる重大な人権侵害について考察する。第三に、アフリカ諸国における気候変動、地球温暖化に伴う自然環境と生活環境の悪化・破壊について、複雑な因果関係を有する多様な現象が生じている現状を解明し、グローバルな危機状況への対応方法を探求する。第四に、「国連の持続能な開発目標」について、南側途上国の多数の地域において犯罪と暴力のリスクが高まっている中で、犯罪を統制し、安全で正義にかなった社会を創り出すために、また、環境犯罪、生態系の破壊を阻止し、環境的正義を実現するために、南北統合グローバル・グリーン犯罪学がどのようにアプローチすべきか検討する。第五に、複数国に影響する水資源紛争、大気汚染、海洋汚染に関する紛争などの実態を解明し、経済発展と環境保護をめぐる紛争を調整し解決するための国際機関として「国際環境裁判所」の創設を提案し、その概要および前提条件について考察する。
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Causes of Carryover |
令和元年度は、「ナイル川流域における水資源をめぐる紛争と協力、グランド・エチオピア・ルネサンス・ダム建設と水資源ヘゲモニーの変化」に関する現地調査(ウガンダ、ケニアほか)を令和元年9月あるいは令和2年3月に予定し、マケレレ大学(ウガンダ)の現地研究者、ナイル流域研究所(ウガンダ)の現地スタッフほかと日程調整をしていたが、コンゴ民主共和国およびウガンダ共和国においてエボラ出血熱が発生したため、現地調査の実施可能性について検討していた。文部科学省は、令和元年7月24日付の「『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』の宣言を受けたエボラ出血熱に係る注意喚起について」において、「(前略)エボラ出血熱に係る情報について,児童生徒,学生,保護者及び教職員等に周知するとともに,特にエボラ出血熱発生地域であるコンゴ民主共和国及びウガンダ共和国への修学旅行,留学及びこれらの地域における研究活動等については,関係情報を踏まえたうえで,安全確保に細心の注意を払っていただくようお願いします。」と注意喚起をした。これに従い、状況が改善するまで現地調査を延期することにしたため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画は、令和2年度の現地調査費用あるいは調査研究文献の購入、資料収集に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)