2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on the Generation of South-North Integrated Global Green Criminology and the Foundation of International Environmental Court
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19K01353
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Research Institution | Toin University of Yokohama |
Principal Investigator |
竹村 典良 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (60257425)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環境・エコ犯罪 / 南北統合グリーン犯罪学 / 国際環境裁判所 / 人工知能 / アルゴリズム統治 / 透明性 / 公平性 / 説明責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、第一に、南側途上国および北側先進国に現象する環境・エコ犯罪の形態・パターンを明らかにし、第二に、北側先進国グリーン犯罪学の理論的解釈レンズを矯正し、南側途上国で発生し、犯罪、暴力などの植民地主義に根差す諸問題を克服し、南北統合グローバル・グリーン犯罪学を生成・発展させ、第三に、天然資源等をめぐる多国間の紛争を解決する「国際環境裁判所」の創設のための諸条件を解明した。 とりわけ、本研究に人工知能(AI)の知見を活用することの可能性と問題点について参考とすべく、刑事司法へのAI導入の現状と問題点について検討した。 人工知能(AI)は日常生活に急速かつ広範に取り入れられ、アルゴリズム社会への移行が加速している。AIを基礎とするシステムの使用について主たる障害となっているのは、そのようなシステムに透明性が欠如していることである。強力な予測を可能とするが、しばしばその結論を導いた経緯について説明することができない。この問題は、説明可能なAI(XAI)をめぐる新たな議論を惹起する。現在、新しい「説明可能なAI」及び「責任あるAI」に関する研究が急速に発展している。 刑事司法におけるアルゴリズムの使用は、広範囲に及び、利益と危険のトレードオフ(二律背反の調整)に対する関心を生んでいる。刑事司法システムの「自動機械システム」への変化は現実に生じている。したがって、公正な裁判と適正手続きという基本原則を保護するために、刑事手続における「アルゴリズム統治」の適切なモデルが必要である。不透明なアルゴリズムに基づく証拠と決定支援アルゴリズムは、防御権に対する重大な挑戦である。不透明性は、アルゴリズム・システムの探求を妨げ、アルゴリズムに基づく証拠と判決との対決を妨げる。アルゴリズムの不透明性から生じる悪影響を取り除き、軽減する効果的な方法を考えることが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の三本柱、第一に、南側途上国および北側先進国に現象する環境・エコ犯罪の形態・パターンを明らかにし、第二に、北側先進国グリーン犯罪学の理論的解釈レンズを矯正し、南側途上国で発生し、日常生活に影響する犯罪、暴力、正義の多様なパターンを説明し、植民地主義に根差す諸問題を克服し、南北統合グローバル・グリーン犯罪学を生成・発展させ、第三に、天然資源等をめぐる多国間の紛争を解決する「国際環境裁判所」の創設のための諸条件を解明する、を着実に進めている。 また、これらの計画を実施するための5つのプロジェクトを実行に移している。とりわけ、平成3年度は、「複雑かつグローバルな環境・エコ犯罪の現状を把握し、その総合的な対策を講じる際に、人工知能(AI)の知見を活用することの可能性と問題点について検討した。 AIは、法執行においてその業務を一変させる潜在力を認識させ、あらゆる形態の犯罪との闘いにおいて効果を高め、既存の能力を増大させることができる強力な道具である。それはまた、プライヴァシー権、平等権、差別されない権利のような基本的人権を侵害しないように、また、無罪推定、自己負罪拒否特権、合理的疑いを入れない証拠のような法原則を傷つけないように、注意深く行使しなければならない「諸刃の剣」である。実際に、法執行においてAIの使用は増加しており、「法執行における責任あるAIの使用」が最も需要な問題になっている。人権の尊重、民主主義、正義、法の支配、および、関連する必要条件として、公平性、説明責任、透明性、説明可能性は、法執行において厳守されなければならない一般原則である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、第一に、南側途上国および北側先進国に現象する環境・エコ犯罪の形態・パターンを明らかにし、第二に、北側先進国グリーン犯罪学の理論的解釈レンズを矯正し、南側途上国で発生し、日常に影響する犯罪、暴力、正義の多様なパターンを説明し、植民地主義に根差す諸問題を克服し、南北統合グローバル・グリーン犯罪学を生成・発展させ、第三に、天然資源等をめぐる多国間の紛争を解決する「国際環境裁判所」の創設のための諸条件を解明する。 これらの計画を実施するために、新たな「人工知能の活用」を進める。現代社会におけるAI使用の到達点として、アルゴリズムの説明可能性(説明責任)は不可欠の要素である。説明可能性には多様な概念が存在し、内在的なメカニズムから外在的な解釈可能性にまで展開している。最近では、公正性、透明性、プライヴァシーなどを含む数々の「AI基本原則」を義務付ける新しいパラダイム「責任あるAI(Responsible AI)についても議論されるようになっている。今後、「責任あるAI」についての認識が高まるのは必然であり、将来において「AI基本原則」について研究することがますます重要になるであろう。現在、「ブラックボックス・アルゴリズム」に依拠する司法を脱却し「責任あるAI」を基盤とするクリアな司法システムを構築することが喫緊の課題となっている。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、「南太平洋島嶼における海洋汚染、生物多様性の減退、天然資源採掘と環境破壊、とりわけ、ニュー・カレドニアにおけるニッケル採掘に伴う環境破壊の現状と問題ほか」に関する現地調査を令和3年8月に予定していたが、引き続く新型コロナウィルスの世界的蔓延のため、わが国のみならず調査対象各国における出入国制限が厳しく、状況が改善するまで現地調査を延期することにした。そのために、次年度使用額が生じた。 次年度使用額の使用計画は、令和4年度の現地調査費用あるいは調査研究文献の購入、資料収集に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)