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2019 Fiscal Year Research-status Report

弁護人立会制度についての実証的・比較法的研究

Research Project

Project/Area Number 19K01354
Research InstitutionAichi Gakuin University

Principal Investigator

石田 倫識  愛知学院大学, 法学部, 教授 (20432833)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2023-03-31
Keywords弁護人立会い / 黙秘権 / 被疑者取調べ / 接見交通権 / 未決拘禁 / イギリス刑事手続 / 弁護人依頼権 / 人質司法
Outline of Annual Research Achievements

本研究の最終目的は、わが国の刑事手続と整合的・適合的な日本型弁護人立会制度を模索・構想することにある。
近年、わが国においても、立法課題として弁護人立会制度の導入に向けた議論が漸く行われるようになった。しかし、(具体的な制度構想を行う上での前提作業となる)弁護人立会制度の目的及び理論的根拠についての考察は未だ充分に行われているとはいえない。
そこで本年度は、第一に、弁護人立会制度について充分な研究の蓄積があり、かつ、実際の運用においても既に弁護人の立会いが定着しているイギリス法の議論状況(及び到達点)を確認する作業を行った(もっとも、本年度2~3月に予定していた実地調査は、新型コロナウイルスの影響により延期せざるを得なかった)。この点、弁護人立会制度の実効性を確保するためには、(1)取調べ前の証拠(情報)開示の拡充が不可欠であること、及び(2)開示情報を踏まえた事前の秘密接見が保障される必要があることを確認し得た。
第二に、取調べに弁護人を立ち会わせる権利(弁護人立会権)それ自体についての考察に入る前に、わが国においても既に研究の蓄積がある「弁護人による実効的な援助を受ける権利」の内実及び射程について、改めて現時点における理論的到達点を把握する作業を行った。とりわけ、被疑者取調べ及び弁解録取に先立って弁護人と接見する権利の保障につき、いわゆる川目国賠訴訟(さいたま地判平成25・10・24、東京高判平成26・3・6)及び第二次内田国賠訴訟(最三小判平成12・6・13)を素材として、この点に関するわが国の判例法の到達点(及び限界)を確認し得た。
その他、接見交通権の保障に関する近年の判例・裁判例(最一小判平成30・10・25、広島高判平成31・3・28)を素材として、判例法における接見交通権の射程を確認する作業を行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

上述の通り、イギリスにおける弁護人立会制度の実態調査は予定通り実施することができなかったが、その他の点に関しては概ね予定通りの進捗状況にある。
上記「研究実績」に示した第一の点に関しては、次年度に予定する実態調査・聴取調査の結果も踏まえて研究成果を公刊する予定である。この点、既に文献調査に基づく議論状況の整理・分析は概ね終了させており、これらの研究成果を補足的に確認ないし修正するのに必要な実態調査を残すのみである。
第二の点に関しては、(1)保護室収容中の未決拘禁者と弁護人等との面会についての最高裁判例(最一小判平成30・10・25)、(2)被告人と接見中の弁護人によるDVD音声の再生に関する裁判例(広島高判平成31・3・28)、及び(3)職務遂行弁護士(刑事収容施設法127条2項3号)と受刑者との間における信書の秘密性に関する裁判例(秋田地判平成31・3・1)につき、判例研究の形で研究成果を公刊し得た。また、日弁連・接見交通権確立実行委員会において、弁解録取に先立つ弁護人接見をテーマに川目国賠訴訟についての批判的検討報告を行う機会を得ることができた。
他方、これらの研究成果を踏まえた上で、実効的な弁護を受ける権利についての総括的な検討・考察が必要となるが、この点についての作業は未だ緒に就いたばかりである。また、欧州人権裁判所の判例法及びEU指令を踏まえて新たに弁護人立会権を導入した欧州諸国(大陸法系諸国)における議論状況や運用開始時における問題点等についても、本年度は(研究成果を公刊できるレベルにまで)充分な調査・検討を行うことができなかった(この点、新たに弁護人立会制度を導入した欧州諸国においても、未だ同制度についての充分な運用評価は行われておらず、次年度以降も継続的に注視していく必要がある)。
以上の点を踏まえて、本年度は、「概ね順調に進展している」と評価した。

Strategy for Future Research Activity

本研究においては、弁護人立会権の趣旨・目的についての理論的検討にとどまることなく、その運用状況についての実態調査も踏まえつつ、弁護人立会権の実際上の機能・効用(ないし弁護人立会制度の導入に伴う刑事司法制度全体への影響等)についても調査・研究を試みる予定である。
具体的には、次年度から研究完成年度(2022年度)にかけて、毎年、2月下旬から3月上旬頃を目途に、イギリス・バーミンガムに拠点を置くCornwall Street Chambers(バリスタ事務所)及びTuckers Solicitors(ソリシタ事務所)等の協力を得て、数名のバリスタ及びソリシタのシャドーイング及び聴取調査を実施する(なお、取調べに従事する同国の警察官等からの聴取調査も予定している)。さらに、欧州諸国における弁護人立会制度について先駆的な研究成果を公表している研究者(アンドリュー・サンダース教授、エド・ケープ名誉教授、ジョン・ジャクソン教授、ジャックリーン・ホジソン教授、ハンナ・クワーク准教授等)や弁護人立会制度の導入に向けた取組みを行っている日本の法律実務家(弁護士等)との意見交換の機会も予定している。
なお、欧州人権裁判所の判例法(サルダズ判決)やその後のEU指令の制定を受けて、EU加盟国においては、被疑者取調べに弁護人を立ち会わせ、かつ、取調べに実効的に関与させる権利を保障することが要請されている。この点、新たに弁護人立会制度を導入した欧州諸国における議論状況及び実際の運用状況等も踏まえながら、法体系(コモンローと大陸法)の違いを超えて普遍的に妥当する弁護人立会権の在り方についても検討・考察を行う予定である。

  • Research Products

    (5 results)

All 2020 2019

All Journal Article (5 results)

  • [Journal Article] 被告人と接見中の弁護人によるDVD音声の再生2020

    • Author(s)
      石田倫識
    • Journal Title

      令和元年度重要判例解説(ジュリスト臨時増刊)

      Volume: 1544 Pages: 172-173

  • [Journal Article] 留め置き二分論に対する批判的考察2019

    • Author(s)
      石田倫識
    • Journal Title

      刑事法ジャーナル

      Volume: 62 Pages: 69-75

  • [Journal Article] 保護室収容中の未決拘禁者と弁護人等との面会2019

    • Author(s)
      石田倫識
    • Journal Title

      新・判例解説Watch(法学セミナー増刊 速報判例解説)

      Volume: 25 Pages: 207ー210

  • [Journal Article] 職務遂行弁護士(刑事収容施設法127条2項3号)と受刑者との間における信書の秘密性2019

    • Author(s)
      石田倫識
    • Journal Title

      法学セミナー

      Volume: 776 Pages: 126-126

  • [Journal Article] 判例回顧と展望 刑事訴訟法2019

    • Author(s)
      石田倫識=服部朗
    • Journal Title

      判例回顧と展望 刑事訴訟法2018(法律時報増刊号)

      Volume: 91(7) Pages: 210-225

URL: 

Published: 2021-01-27  

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