2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K01354
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
石田 倫識 愛知学院大学, 法学部, 教授 (20432833)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 弁護人立会権 / 黙秘権 / 接見交通権 / 秘密交通権 / 弁護人依頼権 / イギリス刑事手続 / 被疑者ノート / 取調べの可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、諸外国の弁護人立会制度の内容及び運用状況等を参照したうえで、わが国の刑事手続と整合的・適合的な弁護人立会制度を構想・提言することにある。そのための準備作業として、本年度は、主として、【1】弁護人立会権の理論的根拠についての考察を行うとともに、【2】弁護人立会権の憲法上の位置付けについての検討に着手した。 【1】については、弁護人立会権の理論的根拠が――供述強要からの保護という伝統的根拠に加えて――手続参加・関与の実効的保障という点に求められるべきことを確認し得た。また、弁護人立会権を保障する意義・機能として、少なくとも、①被疑者の防御主体性の回復、②供述強要からの保護、③法的助言の無効化の阻止、④効果的・実効的な手続参加の確保、という機能が認められることを確認し得た(なお、これらの研究成果については、筆者も編集委員として関与した、川崎英明=小坂井久(編集代表)『弁護人立会権:取調べの可視化から立会いへ』(日本評論社、2022年)において、比較法研究の成果とともに、取り纏めた)。 【2】については、(弁護人立会権の憲法上の根拠となり得る)弁護人依頼権(憲法34条前段)の意義と射程を把握することを目的として、接見交通権(刑訴法39条1項)と憲法34条前段の関係性、接見交通権と捜査権(取調べ権限)との関係性、接見指定制度(刑訴法39条3項)の合憲性、被疑者取調べと接見指定の可否等について、改めて検討を行った(なお、その成果の一部は、石田倫識「弁護人依頼権と接見交通権」法学教室496号〔2022年〕16頁において公表した)。 その他、接見交通権の秘密性(被疑者ノートの内容検査の可否)が問われた裁判例についての検討を行い、その研究成果の一部を公表した(石田倫識「秘密交通権の保障と被疑者ノート」季刊刑事弁護108号(2021年)132頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も、新型コロナウイルスの感染拡大等の影響により、海外における実態調査(参与観察)を実施することはできなかったものの、研究活動の比重を文献調査に移すことで、弁護人立会権の基礎理論(理論的根拠や比較法的知見)についての研究を概ね完了することができた。また、これらの研究成果については、他の研究者とともに、一冊の研究書(『弁護人立会権:取調べの可視化から立会いへ』)に纏めることができた。 他方で、諸外国における運用状況や立会弁護人の役割・権限等の実際については、(海外における実態調査が実施できなかったこともあり)十分な調査を行うことができていない。また、日本国憲法下における弁護人立会権の位置付け(自己負罪拒否特権・弁護人依頼権と弁護人立会権との関係性等)についても、十分に検討を深めることができなかった(これらの残された課題については、最終年度となる来年度の研究課題としたい)。 以上のとおり、研究課題の一部については来年度への継続課題となったが、本年度に予定していた研究活動については、概ねその内容を完了することができたことから、本年度も「概ね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、最終年度に当たる2022年度には、これまでの研究成果を踏まえたうえで、わが国の刑事手続にふさわしい弁護人立会権の在り方を模索・構想する。 弁護人立会権の導入は、わが国の刑事手続が抱える構造的問題(取調べと供述調書への過度の依存)を抜本的に解決するための有効な手段となり得るが、他方で今日の刑事手続の在り様を大きく変えるものであるだけに、弁護人立会権の導入が刑事手続全体に及ぼし得るインパクトについては――全体としての刑事手続の整合性にも留意しつつ――慎重に検討・考察する必要がある。とりわけ、【1】被疑者取調べに代替する供述採取方法(例:自己負罪型司法取引)の必要性と許容性(・限界)、【2】弁護人立会権の法的効果(例:取調べ中断効の有無・内容、弁護人立会権の制限・権利放棄の可否等)や立会弁護人の権限の内容、【3】起訴基準の在り方と起訴後の事件選別方法(例:有罪答弁制度)の要否と問題点、【4】弁護人立会権の侵害と自白の証拠能力等について、検討する予定である。 なお、これまで実施することができなかったイギリスにおける実態調査(参与観察)についても、可能な限り、本年度内に実施したいと考えているが、新型コロナウイルスの感染状況等に鑑み、現地での調査が実施困難となる場合に備え、代替的な調査手段(メール等を用いたアンケート調査等)についても別途検討する予定である。
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Causes of Carryover |
前年度と同様、新型コロナウイルスの蔓延のため、国内外における研究会・実態調査を行うことができず、当初、旅費として使用予定であった予算の大部分を書籍の購入及び文献の取寄せ・複写等の費用に充てることとしたが、一部残額が生じた。なお、残額については、次年度における関連書籍の購入等に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Book] 21世紀の再審2021
Author(s)
日本弁護士連合会人権擁護委員会(編)
Total Pages
560
Publisher
日本評論社
ISBN
9784535525290