2021 Fiscal Year Research-status Report
取調べ録音・録画を用いた任意性判断に対して画像構成が与える影響について
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19K01358
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
若林 宏輔 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (40707783)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 取調べ可視化 / カメラ・パースペクティブ・バイアス / 虚偽自白 / 任意性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は刑事司法における「取調べ可視化」の全面的実施に際し、この撮影方法(主に画角、画面構成)の差異により、本来の目的である被疑者自白の任性評価が異なるとする心理学的効果(カメラ・パースペクティブ・バイアス:以下CPB)を検討することである。とくに日本の取調べ録音・録画映像形式(2画面式)において事実認定者による自白の任意性判断にCPBが生じる可能性について、目的1)取調べ状況以外の刺激を用いたCPB効果の心理学基礎理論の検討、目的 2)視覚的顕在性の観点から映像サイズの影響を確認すること、目的3)罪種、被疑者・取調官の特性、状況の操作によるCPB効果の頑健性 の検討を行うことを目的とした。 2019年度は目的1に関する複数実験で、日常会話映像の提示(二画面・一画面)でもCPBが生じることを明らかにした。しかし同結果は従来指摘されてきた取調べ場面での任意性評価にの系統的変化としては観察されなかった。よってCPBは司法文脈特有の評価の方向性、また各実験の映像評価内容の認知フレーミングの影響が考えられた。 そこで2020年度は新たに目的3-2)として映像刺激評価の認知フレーミングの効果について、主に2画面式を実験刺激として被疑者自白の「自発性」または「強制性」評価の認知フレーミングを操作した。また目的3)に関する被疑者特性として「前科の有無」と状況要因の「裁判官説示」を想定したCPB効果についても同時に検討した。結果、二画面条件の小画面の影響が原因帰属判断で観察された、任意性評価は前科情報の有無によって異なった。2021年度も継続して裁判官説示の抑制効果と、自白の提示方法に音声のみ条件も加えた実験を行った。結果、撮影焦点と音声提示で被告人評価に差はなかった。しかし自白の任意性評価は強制性評価において任意性が高く評価されることが一貫して示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度中も新型コロナウィルス禍の継続により、物理的な対面状況での実験実施が困難であったたことから、実験を全てオンラインで行うための実験装置やシステムの開発・実装を目指した。2021年度中には同システムを利用した実験を複数回行うことができた。 研究課題の進捗としては、目的2に関する実験よりも、目的3に関する実験を2021年度中に実施してきたが、主に2画面提示での任意性評価にCPB効果が生じない結果が一貫しており、一画面提示の場合は原因帰属判断や任意性のうち強制性評価では部分的に生じることなどが結果として明らかになった。これまで認知フレームの側面でこれらの原因を検討してきたが、改めて目的 2)視覚的顕在性の観点から映像サイズの影響について検討する必要がある。 そのため計画としては2020年度中の遅れを取り戻しつつあるが、研究費の延長申請を行い2022年度も目的2に関する実験を複数回実施することでさらに研究精度をあげることとした。この意味で進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も継続して、オンライン化した実験方法を用いて、とくに目的2に関する視覚的顕在性を段階的に操作した実験を複数行う予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度の大幅な実験計画の遅れは、2021年度中に実験のオンライン化によりおおよそ取り戻すことができたが、申請時点で想定していた国際学会発表や国内学会での物理的報告機会が失われ、旅費として予定していた研究費の執行ができなかった。よって3年計画であった本申請研究計画の延長申請を行い、これら予算を次年度使用額としてさらなる実験実施の予算として執行する。
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