2020 Fiscal Year Research-status Report
取調べ技法・記録媒体が変える「事実」認定ー量的分析・ディスコース分析を踏まえて
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19K01359
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
山田 直子 関西学院大学, 法学部, 教授 (70388726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
指宿 信 成城大学, 法学部, 教授 (70211753)
大橋 靖史 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (70233244)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 取調べ可視化 / 取調べ技法 / 事実認定 / 量的分析 / ディスコース分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、複数の取調べ技法及び取調べ内容提示媒体を用いて法と心理学実験(アンケート調査・インタビュー調査)を実施し、得られたデータを量的・質的に分析した上で法学的検討を加え、取調べ映像が裁判体に与える影響及び発生メカニズムを実証的に明らかにして取調べ技法や取調べ内容提示媒体の差異が事実認定者の証拠能力評価及び心証形成に与える影響と当該影響の発生要因を特定し、最終的に、刑事訴訟法の目的達成に資する適切な取調べ技法及び公判における取調べ内容の適切な提示方法を提言することである。 2020年度は初年度の文献調査・イギリスにおける現地調査・予備実験をもとに本実験を実施する予定であったが、コロナ禍で延期せざるを得なかった。そこで、感染状況に応じた本実験実施策の検討とともに予備実験(アンケート調査・インタビュー調査)のデータを法学・心理学の観点から分析し、以下の知見を得た。 すなわち、分析対象である被験者の「語り」には、「言語的な語り」である取調べの内容のみならず、反復・沈黙・言い淀みといった「語り口」や、うつむく等の仕草・動作といった広い意味での「語り方」も含まれており、それらを考慮すると、被験者の「語り」を分析・検討する際には、(1)その場には存在しないが取調べを通じて「語られる他者」が重要な場合もある、(2)調査形態により「視点の多様性」に差異が認められる、(3)調査形態により任意性や信用性判断枠組みが異なる可能性がある、(4)取調べ技法の差異が「語り」に必要な「主語」の差異を生じさせる等、被験者の注目する対象選択に影響を及ぼしている可能性がある等のことに留意すべきである。 また、上記実験結果分析より、本研究遂行にあたり、アンケート調査と、これに比して被験者の思考プロセスや思考の特徴を明らかにする可能性が高いインタビュー調査を組み合わせて実施することの意義の大きさも再確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の計画は概ね順調に進展していたが、2020年度計画実施に向けた準備期間中にコロナ禍が発生し、法と心理学実験の実施が延期されることとなった。また、6月に中間報告を予定していた国際学会も中止された。 一方で、初年度に実施した予備実験で得られたデータの分析・検討をオンライン会議等を通じて進め、重要な知見を得ることができた。こうした知見は本実験実施後におこなわれる法学・心理学両面からのデータ分析に重要な示唆をもたらすものであり、本研究の最終目的である、刑事訴訟法の目的達成に資する適切な取調べ技法及び公判における取調べ内容の適切な提示方法の提言にも大きく貢献するものである。 以上より、実質的に研究の進展は見られるものの、本年度の法と心理学実験実施が延期されたため、「やや遅れている」に該当すると思料する。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、コロナの感染状況の推移を見据えつつ、2020年度実施が見送られた本実験を8月に実施してデータ収集を行うとともに、これまでに得られた知見をもとに分析・検討を行う。 本実験実施に関しては、基本的に、厳重に感染防止対策を講じた上で計画通り対面で行うことを予定しているが、やむを得ない場合にはオンラインでこれを行うことも視野に入れて研究計画を推進する予定である。 また、オンライン開催が決定された国内外の学会や公刊物における成果報告準備を進める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により2020年度に実施を計画していた法と心理学実験が延期されたために次年度使用が生じた。これについては、2021年度に実施する上記実験被験者に対する謝金や感染対策用備品購入等にあてる予定である。
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Research Products
(8 results)