2020 Fiscal Year Research-status Report
欠格条項廃止に伴う会社法と成年後見法の理論的交錯の解決を目指す民商法共同研究
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19K01366
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上山 泰 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (50336103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 千秋 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40386529)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 取締役の欠格条項 / 成年後見制度 / 障害者権利条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Zoomを利用したオンラインの形態により3回の研究会を実施した。第1回研究会(2020年12月2日)では、外部講師として山口詩帆氏(慶應義塾大学大学院・日本学術振興会特別研究員)を招き、「アルゼンチンほかラテンアメリカの「支援(apoyo)」制度」と題する報告を受け、参加者による質疑及び意見交換を行った。第2回研究会(2021年2月6日)では、同じく外部講師として山城一真氏(早稲田大学法学学術院教授)を招き、「フランス法における後見人等による財産管理の指針をめぐる問題」と題する報告を受け、参加者による質疑及び意見交換を行った。第3回研究会(2021年3月21日)では、研究会メンバーによる令和2年度の研究の進捗の総括を行い、次年度の研究会の実施計画等を議論した。第1回及び第2回研究会については、厚生労働省社会・援護局、法務省民事局、最高裁判所事務総局家庭局、日本社会福祉士会等からのオブザーバー参加を得られたため、わが国の法実務及び法政策との比較の観点を含めた多角的な外国法の分析を行うことができた。 各自の分担領域については、第1に、主に文献調査の手法を通じて、会社役員に対する成年後見の開始に係わるフランス会社法上の2019年改正に関する分析を進めた(内田)。第二に、わが国の令和元年会社法改正に関する文献の網羅的な収集とその分析を行い、法制審議会以後の取締役等の欠格条項削除後の対応に関する議論の進展状況を整理した(上山・内田)。第3に、成年被後見人等の会社役員としての活動を担保する手段として意思決定支援の手法が実効的であり得るかを検証するために、主に文献調査の手法を通じて、海外における先進的な意思決定支援のグッドプラクティスを収集し、分析した(上山・水島)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においてはコロナ禍の関係で、当初予定していたドイツでの海外調査は見送らざるを得なかった。そこで、ドイツ法の分析に代えて、フランス法の分析に焦点を当てることとした。フランス法の分析については、既に前年度までにかなりの程度まで進捗していたため、インターネットによる資料収集及び海外図書館への文献複写依頼等により最新の2019年改正に係わるものを含めて関連資料をほぼ網羅的に収集することができた。加えて、研究会において外部講師による最新のフランス成年後見法の報告を受けることができたため、フランス法における会社役員の法的地位と成年後見法との関係については、ほぼ分析を終えることができた。 また、研究会のオブザーバーとして、昨年から参加のあった厚生労働省に加えて、本年度より新たに法務省及び最高裁判所等からの参加者を得ることができたため、わが国における成年後見法領域に関する法政策及び法実務について、より実践的かつ多角的な検討を行うことが可能となり、最終年度の研究総括に向けて、さらに研究組織体制を充実させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度についてもコロナ禍の影響により海外調査の実施が困難となるおそれが想定される。そこで、ドイツ法の分析についてはインターネット等を通じた文献調査を中心としたものに切り替えるとともに、当該領域に詳しい研究者を研究会に招き、理解を深めることを予定している。また同じ事情から研究会は原則としてオンラインで実施することとする。令和3年度は本研究の最終年度として研究の総括を行う必要があることから、民法及び会社法の研究者に加えて、障害法、労働法、社会保障法、社会福祉学、障害学等の関連法分野ないし関連学問領域の研究者を研究会の外部講師として招く予定である。また、年度末には研究成果の対外的発表の一環として、関連分野の研究者のほか、弁護士会、司法書士会、社会福祉士会等の専門職団体、オブザーバー参加の実績がある厚生労働省、法務省、最高裁判所等の関係官庁、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等の当事者団体等を広く対象とした公開研究会を開催する予定である。 さらに研究成果の公表の一環として、法政理論に連載中の「会社法と成年後見法の工作問題―取締役の欠格条項削除に関する問題を中心に」の残り2本を公表して、本論文を完結させる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、調査目的のドイツへの渡航ができず、海外旅費2名分が支出不要となった。併せて、国内での研究会もすべてZoomによるオンライン形態で実施することとなったため、国内旅費についても支出が不要となったことが次年度使用額が生じた理由である。次年度の使用目的については、依然として海外渡航が困難な状況が続く可能性を鑑み、①国内研究会及び年度末の公開研究会の旅費及び外部講師の謝金と、②海外の現地調査に代わる文献調査のための資料収集費用(海外書籍及び海外雑誌の購入、図書館への複写依頼費等)に充当することを予定している。この関係で国内研究会に関しては、当初予定の4回程度から8回程度に開催数を増やす予定である。
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