2021 Fiscal Year Research-status Report
欠格条項廃止に伴う会社法と成年後見法の理論的交錯の解決を目指す民商法共同研究
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19K01366
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上山 泰 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (50336103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 千秋 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40386529)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 成年後見制度 / 取締役の欠格条項 / 障害者権利条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Zoomを利用したオンラインの形態により3回の研究会を実施した。第1回研究会は、2名の外部講師を招いて障害者の就労に関わる法的課題をテーマに実施した。まず長谷川珠子氏(福島大学准教授)から「障害者の雇用及び福祉的就労に関する法制度」について、続けて永野仁美氏(上智大学教授)から「多様な働き方の保障―雇用・就労分野における「インクルージョン」とは 」と題する報告を受け、参加者による質疑及び意見交換を行った。第2回研究会では、同じく外部講師として青木仁美氏(横浜桐蔭大学専任講師)を招き、「代理から援助へ―オーストリアの法改正からの一考察」と題する報告を受け、参加者による質疑及び意見交換を行った。第3回研究会では、研究会メンバーによる令和3年度の研究の進捗の総括を行うとともに、研究最終年度における研究の最終的な成果の公表方法について議論した。なお、昨年度と同様、研究会には厚生労働省社会・援護局、法務省民事局、最高裁判所事務総局家庭局、日本社会福祉士会等からのオブザーバー参加を得られたため、わが国の法実務及び法政策の現状を踏まえた多角的な分析を行うことができた。 各自の分担領域については、本年度も海外調査が実施できなかったため、主に文献調査の手法を通じて各自が担当する比較法研究を進めた。加えて、令和元年会社法改正に関する文献が増加してきたため、その網羅的な収集とその分析を進め、法制審議会以後の取締役等の欠格条項削除後の対応に関する議論の進展状況を整理した。 また、本年度も、上山泰=内田千秋「会社法と成年後見法の交錯問題(3) ―取締役の欠格条項削除に関する争点を中心に」法政理論54巻1号1頁、内田千秋「(立法紹介)会社法の簡素化―会社法の簡素化、明確化および現代化の2019年7月19日の法律第744号」日仏法学31号171頁など、本研究に基づく多数の論文等を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度もコロナ禍の関係で予定していた海外調査は見送らざるを得なかったため、調査方法を文献調査中心に切り替えた点を除けば、ほぼ当初計画に沿った形で研究計画が進展しており、研究実績の出版物による公表も極めて順調に進んでいる。本研究の中心的な成果である、上山泰=内田千秋「会社法と成年後見法の交錯問題 ―取締役の欠格条項削除に関する争点を中心に」については、本年度に(3)を公表することができ、連載の完結の見通しが立ったことに加えて、これを含めた計9本の論文等を公表することができ、本研究の実績を大きく積み上げることになった。また、この連載論文を中心に、本研究の研究実績として公表した関係論文等を集めた研究書を本研究の集大成として刊行する計画が具体的に進んでいる。また、本研究の基盤の一つである研究会についても、オンラインで実施することにより、ほぼ予定どおりに進めることができた。特に本年度は、判断能力不十分者の就労一般に関する法的課題にも視野を広げることができたこと、オーストリアの最新改正(2018年成年者保護法)の詳細に関する知見を深めることができたことなど、研究の総括に向けた大きな成果を得ることができた。なお、以上のように研究の実施自体はおおむね順調であった一方で、本年度及び昨年度の2年間に渡って海外調査ができなかったこと、及び、その間の国内研究会もすべてオンライン開催となったことから旅費の未消化分があること等を踏まえて、研究期間を1年間延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度となるため、研究の総括に向けた取組みを進める。令和4年度に関しても十分な海外調査を実施できるかについては不透明なところが残るため、比較法研究については文献調査中心に切り替えるとともに、当該外国法等に詳しい研究者等を外部講師として研究会に招き、理解を深めることを予定している。また、本年度も定例の研究会については原則的にオンラインで実施することを予定している。 また、研究の総括と社会への具体的な成果の発信のための手段として、①研究書の公刊と、②公開の拡大研究会の実施の2つを予定している。①については、本研究の中心的な成果である、上山泰=内田千秋「会社法と成年後見法の交錯問題 ―取締役の欠格条項削除に関する争点を中心に(1)~(4・完[予定])」を中核として、本研究に基づいて公表した論文等をまとめて、年度中に信山社より出版する予定である。また、②については、会社法の研究者をゲストに招いて、先述の論文に関するコメント報告を行ってもらった上で、参加者間で意見交換等をする予定である。本研究会は代表者と分担者が参加している成年後見法研究会と合同で実施し、同研究会のメンバーである民法研究者にも参加してもらうことを想定している。また、定例の研究会へのオブザーバー参加実績のある厚生労働省、法務省、最高裁判所、日本社会福祉士会等に加えて、弁護士会、司法書士会等の専門職団体や当事者団体等にも声がけをして、多面的な視点からの検討が可能となるように準備を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、調査目的の海外渡航ができず、海外旅費2名分(前年度分の同じ理由による繰り越し分を合わせるとのべ4名分)が支出不要となった。併せて、国内での研究会もすべてZoomによるオンライン形態で実施することとなったため、国内旅費についても支出が不要となったことが次年度使用額が生じた理由である。次年度の使用目的については、依然として海外渡航が困難な状況が続く可能性を鑑み、①国内研究会及び年度末の拡大公開研究会に招聘する外部講師の謝金等、②海外の現地調査に代わる文献調査のための資料収集費用(海外書籍及び海外雑誌の購入、図書館への複写依頼費等)、③本研究の総括として出版する研究書の公刊費の一部等に充当することを予定している。
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[Book] 障害法 第2版2021
Author(s)
菊池 馨実、中川 純、川島 聡、上山泰ほか
Total Pages
270
Publisher
成文堂
ISBN
978-4-7923-2777-4