2022 Fiscal Year Research-status Report
欠格条項廃止に伴う会社法と成年後見法の理論的交錯の解決を目指す民商法共同研究
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19K01366
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上山 泰 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (50336103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 千秋 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (40386529)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 成年後見制度 / 取締役の欠格条項 / 障害者権利条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、Zoomを利用したオンラインの形態により4回の研究会を実施した。第1回研究会では、研究会メンバーによる各自の研究の進捗状況の報告と令和4年度における研究計画に関する意見交換等を行った。第2回研究会(法人後見制度研究会との共同開催)では、外部講師として山口詩帆氏(日本学術振興会特別研究員 DC2)を招いて、「アルゼンチン共和国及びブラジル連邦共和国における成年後見法改正について」と題する報告を受け、参加者による質疑及び意見交換を行った。第3回研究会(法人後見制度研究会との共同開催)では、身元保証等高齢者サポートサービス事業者との間で締結された死因贈与契約を無効とした名古屋高裁令和4年3月22日判決を題材として、同事件の被告側代理人を務めた熊田均弁護士ら3名の弁護士による報告を受け、参加者による質疑及び意見交換を行った。第4回研究会では、研究会メンバーによる令和4年度の研究の進捗の総括を行うとともに、研究最終年度となる次年度における最終的な研究成果の公表方法を再確認した。 各自の分担領域については、本年度もコロナ禍の影響により海外調査の実施を見送ったため、主に文献調査の手法を通じて各自が担当する比較法研究を進めた。その概要については、先述の第4回研究会において情報共有を行った。加えて、令和元年会社法改正に関する文献が増加してきたため、その網羅的な収集とその分析を進め、法制審議会以後の取締役等の欠格条項削除後の対応に関する議論の進展状況の再整理を行った。 研究業績の発信については、菊池馨実編『相談支援の法的構造―「地域共生社会」構想の理論分析』に収録した上山泰「成年後見制度利用促進基本計画における権利擁護支援の意義 「小さな成年後見」の理念に基づく成年後見法再改正に向けて」をはじめとして、本研究の成果と関連する2本の論文と3本の判例評釈を公刊することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年の令和3年度と同じく、令和4年度についてもコロナ禍の関係で予定していた海外調査を見送らざる得なかったため、比較法の中核となるフランス法及びドイツ法に関する調査は、文献調査中心の手法に切り替えて実施した。この一方で、外部講師による研究会報告を通じて、昨年度のオーストリアに続き、本年度は障害者権利条約と最も親和的な民事法制の改革を行ったと評されている南米(アルゼンチン及びブラジル)の法状況について最新の知見を得ることができた。 研究実績の公表については、関連する論文2本と判例評釈3本を公刊したことによって、昨年度と同様、本研究の研究実績となる業績を大きく積み増すことができた。 しかし、この一方で、3年間にわたる海外現地調査の見送りの影響もあり、本研究の中心的な成果となる上山泰=内田千秋「会社法と成年後見法の交錯問題 ―取締役の欠格条項削除に関する争点を中心に」の連載完結を実現することができなかった。また、この結果として、本研究の総まとめとして行う予定であった、①本連載論文を中核とする研究書の発刊と、②拡大公開研究会を令和4年度中に実施することが難しい状態となってしまった。こうした事情に加えて、コロナ禍の影響により、本研究で予定していた海外現地調査が、初年度のフランス(パリ、ナント)調査を除いて、実施できない状況が続いたこと、初年度以外の国内研究会もすべてオンライン開催となったことから旅費の未消化分が相当程度残ってしまったことを踏まえて、本研究課題については再度の期間延長を余儀なくされた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度となるため、研究の総括に向けた取組みを進める。令和5年度に関しても十分な海外調査を実施できるかについては不透明なところが残るため、仏独に関する比較法研究については文献調査中心に切り替えるとともに、当該外国法等に詳しい研究者等を外部講師として研究会に招き、理解を深めることを予定している。また、令和5年8月末に韓国ソウルで開催される国際会議に研究代表者が講演者として招待されているので、この機会に併せて現地の研究者らとアジアにおける成年後見法の現状に関する研究会を実施する予定である。なお、本年度も定例の研究会については原則的にオンラインで実施することを予定している。 研究の総括と社会への具体的な成果の発信のための手段として、①研究書の公刊と、②公開の拡大研究会の実施の2つを予定している。①については、本研究の中心的な成果である、上山泰=内田千秋「会社法と成年後見法の交錯問題 ―取締役の欠格条項削除に関する争点を中心に(1)~(4・完[予定])」を中核として、本研究に基づいて公表した論文等をまとめて、年度中に信山社より出版する予定である。また、②については、会社法の研究者をゲストに招いて、先述の論文に関するコメント報告を行ってもらった上で、参加者間で意見交換等をする予定である。本研究会は代表者と分担者が参加している成年後見法研究会及び法人後見制度研究会と合同で実施し、同研究会のメンバーである民法研究者にも参加してもらうことを想定している。また、定例の研究会へのオブザーバー参加実績のある厚生労働省、法務省、最高裁判所、日本社会福祉士会等に加えて、弁護士会、司法書士会等の専門職団体や当事者団体等にも声がけをして、多面的な視点からの検討が可能となるように準備を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、調査目的の海外渡航ができず、海外旅費2名分(前年度分までの同じ理由による繰り越し分を合わせるとのべ6名分)が支出不要となった。併せて、国内での研究会もすべてZoomによるオンライン形態で実施することとなったため、国内旅費についても支出が不要となったことが次年度使用額が生じた理由である。次年度の使用目的については、依然として海外渡航が困難な状況が続く可能性を鑑み、①国内研究会及び年度末の拡大公開研究会に招聘する外部講師の謝金等、②海外の現地調査に代わる文献調査のための資料収集費用(海外書籍及び海外雑誌の購入、図書館への複写依頼費等)、③本研究の総括として出版する研究書の公刊費の一部等に充当することを予定している。
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[Book] マンション判例百選2022
Author(s)
山野目 章夫、佐久間 毅、熊谷 則一、上山泰ほか
Total Pages
208
Publisher
有斐閣
ISBN
9784641115590
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