2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K01370
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
榊 素寛 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80313055)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保険 / サイバーリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1)技術の発展や社会の変容による法的状態、紛争及びリスク配分への影響、2)リスクの受け皿となる保険商品の変化と保険法学への影響、3)保険の存在を前提とした望ましいリスク配分を達成するための民事責任や保険商品のあり方とこれらを実現するうえで望ましい法制度のあり方、の諸点を明らかにすることを目的とする。研究初年度である2019年度は、研究計画に従い、1)の技術の発展及び2)の保険商品の変化に関する研究を行った。具体的には、以下の通りである。 第一に、インシュアテックやIoT、自動運転など、伝統的な保険が想定していなかった技術の発展について現状及び予測される将来のサーベイを行い、研究対象の把握を行うとともに、新たに出現したリスクや、その性質が変化することが予想される既知のリスクについて研究を進めた。これらのサーベイは、次年度以降の研究の前提となるものである。 第二に、従前より研究代表者が行ってきたサイバーリスク研究をさらに進め、サイバーリスクと保険に関する法的論点や保険商品のあり方を分析した。今後の研究の見通しとして、(1)既存の約款解釈論で展開されてきた議論との関係、(2)カバレッジの有無や重複に関する問題、(3)いわゆるサイレントサイバーリスクの問題、(4)サイバーリスクが既存の体系に提起する問題、(5)約款の作成・解釈手法、(6)保険募集との関係、(7)危険選択の可否とあり方、等が研究対象になるとの暫定的な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的のうち、1)2)について、一定の知見を得ており、研究業績の公表には至っていないが、4年間の研究全体としては、計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初計画では、技術の発展と保険の側面を中心とした研究を中心的に行い、あわせて社会の変容と保険に関する研究を行うものであった。ところが、新型コロナウィルスの問題が発生したことで、リスクのあり方や人々の行動変容を含めた社会の変容が急速に進み、より大きな論点が発生する事態となっている。 このように、研究対象のあり方自体が大きな変化を受けたため、当初計画通りサイバーリスク中心の研究としつつ、高齢化のみならずパンデミックがもたらした社会の変容の問題に対する研究を行うかを検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由の大部分は、新型コロナウイルスの影響により2月以降の資料収集のための出張を行えなかったこと及び洋書の手配が影響を受けたことによる。2020年度以降においても資料収集に影響を受けることが見通されるため、書籍購入に割り当てる金額を増額する計画である。
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