2023 Fiscal Year Annual Research Report
海事債権の実現方法に関する比較法的研究―船舶先取特権制度の再検討を中心として
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19K01372
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
増田 史子 岡山大学, 社会文化科学学域, 教授 (60362547)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 船舶アレスト / 船舶先取特権 / 船長 / 海商法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本法上の船舶先取特権制度について英米法系諸国における対物訴訟との機能的類似性を見出す見解があることを踏まえ、船舶の(仮)差押えの制度全般を視野に入れて比較法研究を行い、このような見方の妥当性と今後のわが国の法制のあり方を検討することにあった。研究期間中、世界的な感染症の流行とこれに伴う輸送の混乱など、研究開始当初は予期しておらず、本研究課題との関係でも影響の見極めが難しい事象が起きたことから、研究期間の延長を2回認めていただき、手広く研究資料の渉猟を行い検討を進めた。 最終年度の2023年度は、ようやく外国出張に行くことができる環境が整ったため、海商法に関する国際的な学会に参加し近時の議論動向を確認するとともに、最終的な成果の取りまとめに向けて収集した資料の分析を進めた。ただ、年度前半は、研究室の所在する建物の改修工事とこれに伴う研究室移転の影響により、十分な研究時間と研究環境を確保することが困難な状況になってしまったこともあり、執筆と考察のための十分な時間を確保できず、年度内に最終的な成果を論文として公表することはできなかった。2023年度の具体的な研究成果としては、船長の地位に関する近時の議論動向をまとめた論考がある。また、年度末には、本研究の成果を踏まえて、日本の海商法の現状と課題について講演を行った。 本研究課題に係る既発表の論文は周辺的な論点に関するものが中心で、総合的なとりまとめは未完了ではあるが、これまでの検討により、①多くの国が加盟する1952年のアレスト条約の国内実施の方法には国によって相当に差があること、②大陸法系の国では(これも国による相違はかなりあるが)船舶アレストは概ね暫定的差押えの方法の一種として整理されていること、③船主責任制限の代償として船舶先取特権を付与するという発想は諸外国にはみられないこと等を一応は確認できた。
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Research Products
(2 results)