2020 Fiscal Year Research-status Report
「債権者等の組分け」からみた事業再建手続の基本的課題の再検討
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19K01377
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
田頭 章一 上智大学, 法学研究科, 教授 (80216803)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 倒産債権者等の組み分け |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、コロナ感染予防のため、国内外への出張ができなかったため、文献を中心とした研究になった。文献調査・研究においては、倒産手続における利害関係人(倒産債務者に対して何らかの権利を有する者)の分類について、可能な限り幅広く検討した。その結果、「組み分け」は法律上は債権者(関係人)集会における決議方法に関する分類であり、それ以外にも多様な「分類」(または「枠付け」)があることが再認識された。 この「分類」の視点としては、大きく実体的分類と手続的分類に分けることができ、前者の例としては、実体法上の優先順位、権利の性格(物権か債権か、債権の場合いかなる発生原因によるものか)などによる分類がありうる。他方、後者については、倒産処理の方法に関する交渉の相手方の性格(たとえば銀行と不法行為債権者は交渉相手方として大きく異なる)、手続に取り込む権利者かそれとも手続外権利者か、などによる分類が可能である。 これらの「分類」の方法およびそれぞれの権利者の処遇の方法は、わが国と外国で異なる面もあることが確認できた。またわが国では、上記のうち「手続分類」についての意識的検討が不十分であったことも知見として得られた。解釈上の論点としては、たとえば、上述のような一般的分類と各権利者の特性による個別処理(たとえば商取引債権者への早期全額弁済)とが混同されていると思われる場合の評価、実体的分類と手続的分類の交錯領域での解釈(同一性格の権利を手続的な理由で分類できる限界)などを挙げることができる。 本年度の研究過程における関心に関連して、令和元年会社法の改正に伴う社債管理の見直しを材料にして、社債という特別な債権者の集団の取り扱い(社債管理)の問題点について検討し、論文の発表を準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍による研究活動の制限が影響し、国内外におけるセミナー等への参加や研究報告等による研究資料の蓄積およびその進行状況の確認・修正等の作業がやや遅れていると感じている。また、一時的には図書館等での資料の入手等が制限されて、文献等の研究作業を中断せざるを得なかった面もある。 その一方で、本年度は文献研究による一定程度の研究材料の収集および課題の明確化の作業は、ある程度行うことができた。したがって、次年度に向けての研究対象の絞り込みはできたと感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染状況等による社会的状況およびそれに伴う研究環境の変化などに対応して、研究を進める。 2020年度に予定していたが実施できなかった調査・研究については、可能な限り2021年度に行う。また、2020年度より進めている文献研究は、2021年度にも引き続き行い、研究報告等を通して、まとまったテーマごとに論文等を発表したい。 とりわけ、倒産手続における権利者の「分類」の総論的な問題意識については、早期に考え方をまとめ、序論的考察として発表する機会を持ちたいと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症対策のため、出張が不許可(ないし自粛)となり、大学での研究活動が制限されたなどの理由で、本年度の研究計画を実施できなかったことにより、研究費の多くの部分を次年度に回さざるを得なくなったものである。 次年度の使用計画については、当初の計画と基本的には同じく、文献等の研究資料の収集のほか、外国倒産手続における債権者等の処遇の実態についての研究に利用する予定である。外国手続については、今後の準備状況にもよるが、アメリカのほか、最近制度的な改革があったEU諸国などでの現地研究を考えている。
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