2023 Fiscal Year Annual Research Report
物権債権峻別論に関する批判的考察-歴史的経緯・現行法上の意義・解釈論と立法論-
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19K01379
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大場 浩之 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10386534)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 物権債権峻別論批判 / 物権法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の最終年度にあたる2023年度においては、2022年度末に刊行することができた論文集『物権債権峻別論批判』(成文堂)の内容について、さらに研究を進めてブラッシュアップするとともに、担保物権法の分野を除いたいわゆる物権法総論に関する体系書・教科書として、『物権法』(成文堂)を刊行することができた。 具体的には、まず、物権債権峻別論に対する批判として、物権と債権のいちおうの区別は是認されうるとしつつも、両者の違いは直接性を有するかどうかのみであって、絶対性のある債権も存在すれば相対性しか有しない物権も存在し、かつ、排他性のある債権もあればそれを有しない物権があることを、ドイツ法や法制史のさらなる考究を通じて明らかにした。 そして、物権法に関する体系書・教科書を執筆するにあたっては、これまでの物権法総論に関する自らの研究成果を有機的にとりこんだ上で、物権法総論の問題群を物権種類論・物権効力論・物権変動論に分けつつ、かつ、この順序で講述することの意義を強調した。とりわけ、物権種類論に関する記述は、本研究課題についての研究成果が直結した内容となっている。すなわち、物権法定主義および制限物権の存在と、制限物権および債権の緊張関係とについては、物権債権峻別論を批判的に考察することによって、それらの意義をより明らかにすることができた。 当初の研究期間は3年間であったが、新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延によるパンデミックのために、とくに研究出張を行うことがままならず、研究期間を延長していただき、結局は5年間を要することとなった。しかしながら、その分、論文や研究書の執筆により時間を割くこともでき、結果として体系書・教科書を刊行する機会にも恵まれた。
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Research Products
(3 results)