2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01380
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本間 靖規 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (50133690)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 既判力 / 主観的範囲 / 手続保障 / 依存関係 / 当事者適格 / 実体適格 / 法的安定 / 形式的当事者概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度もコロナ禍で海外渡航が制限されたため、ドイツ・フライブルク大学の民事訴訟法研究所、ハイデルベルク大学、ルクセンブルクマックスプランクヨーロッパ民事訴訟法研究所などでの資料・インタビュー調査やテーマに関する研究報告と共同研究ができず、これまでに入手した外国ならびに日本の文献による研究に終始した。現在は、中間報告としての位置づけで判決効の主観的範囲に関する研究をまとめているところで、脱稿間近の状況にある。その成果は、2022年10月に刊行される、早稲田大学法学会百周年記念論文集に公表する予定である。またこれと関連する研究として、民事訴訟法142条、135条、136条に関する注釈の執筆を担当したが、特に135条の将来給付判決の既判力という項目を設けて研究を行った。その際、ドイツの議論状況を研究して日本の議論にどのように活かすことができるかを検討した。すでに校正も終了し、2022年5月に注釈民事訴訟法第3巻(有斐閣)として発刊される予定である。既判力の主観的範囲は、奥の深い問題で実務家も多数この議論に参加して議論もかなり錯綜している状況にある。また従来反射効として議論されてきた規定のないところでの解釈による判決効の拡張の問題もドイツとの関係でいえば確実にこのテーマで既判力との関係を論じる必要があり、判決効の第三者への拡張全般の中で既判力の主観的範囲を総合的に考察する必要があることから、内外のかなり多くの文献や資料に当たって調査を進めてきた。さらに当事者論との関係では、日本では形式的当事者概念を当然の前提としているが、ドイツにおいては立法の際の成り立ちもあって実体的当事者概念の痕跡が残っている状況にある。それらを踏まえて上述のような形で成果を公表しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は、2019年度から2021年度までの3年間で完結予定の研究でスタートしたところ、コロナ禍で比較法研究を本格的に行うための海外での資料やインタビュー調査、外国大学研究所、特にドイツ・フライブルク大学民事訴訟法研究所での成果報告や共同研究ができず、それらをふまえた成果物の発表が十分にできていないことが原因である。とはいえこの間、2021年3月に会社法コンメンタール19巻(商事法務)に会社訴訟の判決効の拡張(会社法838条)を含めた論考を発表し、また収集した資料に基づいて、いくつかの成果をすでにまとめているところである。その刊行は、先にも述べたとおり、2022年度中に出版される注釈民事訴訟法(第3巻)142条、135条136条や早稲田大学法学会百周年記念論文集などに掲載される。前者はすでに校正も終了して筆者の手を離れており、後者は脱稿間近の状況にある。研究計画に予定した研究の進捗が遅れているとはいえ、デスクワーク的な準備は積み重ねてきたつもりである。もっとも既判力の第三者への拡張論はかなり研究を進めてきているが、本研究の今一つのテーマである当事者論は、まだこれから当たるべき資料がかなりある状況なので、研究期間を1年間延長させていただいたことを活かして、今年度は、当事者論の研究を進めていく予定である。遅れている海外研究所における成果報告や資料・インタビュー調査、共同研究などもコロナの状況も見ながら順次進めていくことになる。研究の進捗状況は当初の予定よりも遅れているとはいえ、客観的な状況がその原因になっているともいえるので、そのコロナからの回復状況を見ながら研究の回復にも努めたいと思っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度になるので、コロナ禍からの回復状況を見ながら、当初から予定しているドイツ・フライブルク大学訴訟法研究所やハイデルベルク大学、ルクセンブルク・マックスプランクヨーロッパ民事訴訟法研究所での調査や中間報告的な研究報告、共同研究を是非行いたいと思っている。またできれば、中国上海の華東政法大学での成果報告も実現したい。なお、成果としては、前述したが今年度中に刊行が見込まれるものとして、注釈民事訴訟法(第3巻)142条、135条、136条、早稲田大学法学会百周年記念論文集に掲載予定の本研究のテーマの一つである既判力の主観的範囲についての論考が10月に刊行される。その後は、当事者論の研究を国際民事訴訟法における当事者論を含めて進めていきたい。そのうえで既判力の主観的範囲と当事者論の総合的研究を完成させることを目指している。当事者論については、現在すでに文献や資料を収集して読み進めているところであるが、外国文献の中には日本では手に入りにくい雑誌などもあることから、何とか外国での収集に努めるつもりである。まだ客観的状況がそれを許すのか不明な点もあるが、状況を見ながらできる限り早急にこれを実現したいと考えている。なお、受け入れ先の大学研究機関にはすでに連絡が取れており、時機のみの問題となっている。また中国での成果報告も同様の状況にあるが、受け入れ先の上海・華東政法大学とは、2020年度から連絡を取り合い、共同研究の態勢を整えているところである。
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Causes of Carryover |
日本の民事訴訟法の中でも既判力に関する部分は、条文の成り立ちからいって歴史的研究並びに比較法的研究を要するものであり、そのため外国、特に日本の民事訴訟法が強い影響を受けているドイツ法の深い理解を欠かすことはできない。たしかにドイツの文献の主要なものは日本でも入手することができ、実際昨年度まで入手した資料に基づいてすでに成果を上げ、またこれからも挙げつつある。しかしやはりドイツやヨーロッパ諸国の法制については、現地での細やかな資料やこちらの研究の成果報告をしてその反応を見てようやく理解が正当なものかどうか確認することができるものである。その意味で昨年度、海外渡航が非常に制限されていたことは本研究の完成にとって大きな支障となっていた。そこで今年度これを達成するために、この費用を使いたいと思うにいたった。具体的には、できるだけ早い時期にまず研究拠点としてのドイツ・フライブルク大学に赴いて民事訴訟法研究所で資料やインタビュー調査を行い、研究成果の補充や理解の正確さの確認を行いたいと考えている。また他外国での研究報告もできる限り行うべく中国他いくつかの国と連絡を取っている状況である。そのような理由で昨年度分の残存使用額が生じ、今年度に計画の実現を図ることになった次第である。
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