2021 Fiscal Year Research-status Report
訴訟における情報および証拠の収集に関する研究(知的財産権訴訟を題材として)
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19K01384
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
濱崎 録 西南学院大学, 法務研究科, 教授 (90432773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民事訴訟法 / 証明困難の軽減 / 事案解明義務 / 知財訴訟 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、知財訴訟が民訴法に先駆けて文書提出義務の一般義務化を図り、秘密保持命令などの議論も民訴法に先行しており示唆的であることから、知財訴訟の証拠収集をめぐる議論を参考にして、民訴法一般における当事者の証明困難を解決するための方策を検討することを目的としている。 上記の研究目的を達成するため、当初はドイツの査証制度等の導入を議論した知財訴訟の取り組みを紹介し、これをもとに通常民事訴訟一般における証明困難の軽減のための理論を再検討することを予定していた。しかし、2020年度に続き、2021年度も新型コロナウイルスの流行拡大の影響により国外での資料収集や調査は断念せざるを得なかった。そのため、知財訴訟における証明困難の軽減のための諸制度については、国内で文献研究を中心として行い、これを前提として、通常民事訴訟における証明困難の軽減のためのいわゆる事案解明義務論との連結を試みる研究報告を日本民事訴訟法関西支部研究会(2022年2月5日開催)にて行った。 上記報告に対しては、①知財訴訟における制度は民訴法の基本原則によっているものの、証明困難の軽減のための諸制度を民訴法に先行して有しているのは、知財法が民訴法とは異なる目的に基づいてという特殊性に起因する可能性が指摘がなされた。また、②特許権侵害訴訟ではすでに先行して認められている相手方の具体的態様の明示義務についても、もととなる民訴規則における積極否認義務を通常民事訴訟において認めることの課題も明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス流行の影響で、本研究課題の採択時に予定していた国外での資料収集や調査等は延期、または行わない方向で課題に取り組むよう変更せざるを得ず、これによる研究進捗の遅れがやや生じたため。 また、国内での研究会等への参加と、その際の情報収集についても、研究会の実施方法がオンラインによるものとなったため、当初予定していたほどに情報の収集ができていないことも計画に遅れが生じている理由である。 さらに、本年度末に行った研究報告によって新たな課題も明らかになったため、当初の研究計画を若干変更して、この課題の解決に取り組むこととした。この研究計画の修正も計画進捗の遅れに影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度末頃に本研究課題の実施期間を1年延長する旨の申請を行い、これが認められた。このため、延長が認められた2022年度中に国外での情報収集と調査の可能性も探りたいと考えている。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大状況とその周辺の諸事情により、国外での調査等がなおできない可能性も高い。そのため、国外での調査等が不可能な場合の研究課題の進め方について、若干の検討の方向の修正を図った。 修正の具体的な内容として、第一に、知財訴訟における立証困難の軽減策が民事訴訟とは異なった、知財特有の制度目的による可能性の有無について、本研究課題の考察の前提として明確にしておく必要が2022年2月の研究報告の際に質問を受けたため、これを明らかにする。すなわち、知財訴訟における目的と通常民訴における目的の異同により、知財訴訟における様々な立証困難の軽減策をそのまま通常民訴にも設けることができるか否かの結論が左右されうる、という点について検討を行う。 そのため、知財訴訟以外でも同様に立証困難が生じる事案を検討することによって、「知財訴訟がその特有の目的のために通常民訴とは異なる立証困難の軽減策を訴訟制度内に設けることが肯定されているわけではなく、通常民訴においても、知財訴訟における立証困難の軽減策を参考とした運用と立法は可能である」との仮説の検証を試みる。この取り組みの一端を、論説として2023年1月頃に公刊予定である。 また、通常民事訴訟における積極否認義務の取扱や秘密保持命令についての検討は、2022年11月下旬の研究会にて研究報告を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、外国での資料収集および調査等が困難となったことによるものである。 また、国内の研究課題と関連するテーマに関する報告、学会や研究会への出席のための出張も、同様の理由により、研究会等がオンライン開催となったため、研究計画時におもに旅費として計上していた研究費の使用ができなくなったことによるものである。
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