2022 Fiscal Year Annual Research Report
訴訟における情報および証拠の収集に関する研究(知的財産権訴訟を題材として)
Project/Area Number |
19K01384
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
濱崎 録 西南学院大学, 法学部, 教授 (90432773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民事訴訟法 / 証明困難の軽減 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、知財訴訟が民訴法に先駆けて文書提出義務の一般義務化を図り、秘密保持命令などの議論も民訴法に先行している点で示唆を多く含んでいることから、これらの知財訴訟分野における証拠収集をめぐる議論を参考にして、民訴法分野における当事者の証明困難を解決するための方策を検討することを目的とした。 最終年度である2022年度には、それ以前の年度に文献調査を通じて収集した情報をもとにして、関西民事訴訟研究会(11月26日開催)で「民訴法248条の類推適用の拡大の当否について―民訴法248条と諸法における類似規定―」と題する研究報告を行った。また、この内容の一部を「民事訴訟法248条の類推適用の範囲について」として藤本利一ほか編『次世代民事司法の理論と実務』において公表している。 研究期間全体では、新型コロナウイルス流行により当初計画した海外の実情調査が困難になり、文献による調査以外は計画の変更を余儀なくされた。かかる状況ではあったが、研究期間を通じて、国内の問題として、民事訴訟法の周辺諸法において、構造的に立証困難な状況が存在する類型が民訴法における原則を修正するかたちで規律が設けられている実態を明らかにし、これと通常民訴法における事案解明義務との理論的連携の可能性を指摘した。 しかし、周辺諸法の立証困難事案における諸法の新設過程では、当該分野の特殊性と、これに基づく立証困難の解消の必要性は強く唱えられている一方、それらの制度の理論的位置づけや、もととなっている通常民訴法における原則との関係性についての考察は周辺諸法においてはほとんどなされておらず、通常民訴法内の議論としても欠けていることが明らかとなった。このため、周辺諸法における立証困難解消のための方策をより範囲を拡大して調査すること、周辺諸法と通常民訴法との理論的連結の有無を引き続き検討する必要があることが今後の課題となった。
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