2022 Fiscal Year Research-status Report
環境の法的保護における合意的手法の活用-フランス環境法の「契約化」
Project/Area Number |
19K01389
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
小野寺 倫子 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (10601320)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環境法 / 契約 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
こんにち市民の環境意識の高まりを受けて、消費における環境配慮や、土地上での自発的な環境保全など、私人のイニシアティブによる環境保全を契約を通じて実現する、環境の法的保護の契約化というべき現象がみられる。本研究は、この分野において近年議論が進展しつつあるフランス法を参照して、わが国への示唆の可能性を探求するものである。 2022年度前半においては、2021年度後半に執筆した不動産上での環境保全実施に関する契約および消費契約における環境配慮に関する2論文の刊行に向けた作業をすすめ、また並行して、フランスにおける環境法の契約化に関する新たな研究情報の収集作業を行った。 2022年度の年度当初においては、フランスの研究の進展状況に鑑みて昨年度に引き続き、2021年に立法された消費者契約における環境配慮等、フランスにおける個別立法の分析を中心に研究を進める予定であった。しかし、個別立法に関して新たな研究情報が当初の想定に反して収集できなかった半面、2022年度の中盤には、環境法の契約化に関連する内容を含む本格的な博士論文が複数刊行されるなど、このテーマについて基礎理論的な議論に深まりがみられたことから、2022年度後半においては、それら論文の分析を中心に研究を進めた。 これまでの研究によって、環境の法的保護の契約化においては、環境保全の見地からの契約のコントロールの根拠としての公序(環境公序ないしエコロジー公序)と、当事者が契約において環境配慮を行う前提としての環境情報コミュニケーション(環境に関する情報提供義務)の2点が柱となると考えられるところ、2022年度においては、後者の視点(環境情報コミュニケーション)に関連するものとして、デジタルプラットフォームが環境の法的保護に与えうる影響に関して、フランスの研究者の論稿の翻訳を行った(公表は2023年度中を予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、現在フランスにおいて展開されている環境の法的保護の契約化に関する議論を同時並行的に参照して進める予定で、2019年度にスタートしたものである。研究期間2年目に当たる2020年以降、新型インフルエンザの世界的流行の影響により、現地調査等移動を伴う研究方法に制約が生じ、研究手法がほぼ文献調査に限定されているのが実情である。もっとも、文献の分析による研究についても、フランスにおける研究の進展がコロナ禍前と比べて全般的にペースダウンしており、文献資料についても、刊行の長期の遅延や出版中止、世界的な物流の停滞に伴う納品期間の長期化など事態が断続的に継続している。また、2020年度から2022年度までは、遠隔授業の実施等教育業務の負担がコロナ禍前と比べて格段に増加したことも、研究の進捗に影響を及ぼす結果となった。 2022年秋ごろからは、状況に変化がみられ、少しずつコロナ禍前の研究環境に戻りつつあるものの、2020年度以降のコロナ禍の影響の累積によって、研究の進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度においては、2022年度に引き続き、環境の法的保護の契約化に関連する最近のフランスの議論の展開、研究成果の分析をすすめ、この問題について、基礎理論的な問題点を明らかにし、日本法への示唆の可能性を探求する。また、フランスにおける環境契約にかかわる近時の個別立法に関しても引き続き調査を進める。今年度が本研究の最終年度であることから、前年度までの研究において得られた知見と、今年度の研究の成果とをまとめて、本研究の全体的なまとめを行う。 なお、上記と並行して、2022年度に翻訳したフランスの研究者の論稿について、刊行に向けた作業を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で旅費の支出がなかった。また、発注した図書の刊行中止や、刊行時期の延期による年度内未納などが相次ぎ、予定通りに文献の収集ができなかった。 次年度使用額については、出張旅費および文献資料の収集に使用する計画である。
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